6話
仕事前に投稿しときます。
「ヒカリ、大丈夫?」
「うっ………大………丈夫だよ」
異空庫の性能を確かめてしばらくしたら【サウザンド】に着いた。
街門をくぐると、勧誘が始まった。
「いらっしゃい~、うちには良い娘が揃ってるよ♪」
「そっちの店よりうちにしなよ、今なら射的イベントやってるよ。300ポイント越えたら、お触りし放題だよ」
「お腹空いてないかい?大食い料理に挑戦して完食出来たら金貨1枚、参加は銀貨1枚」
千の遊びを提供する街だけはあるのか?
困惑しているボク達に対して、勧誘合戦を慣れた様子でエステロさん達は回避して行き、エステロ商会へとたどり着いた。
多くの人で溢れた通りには、ファンタジーの定番である獣耳をつけた種族や足枷をつけた奴隷のような感じの人もいた。
そこでユリィがボクの様子がおかしいことに気づいたのだ。
召喚されてから今まで、そういうことはしてなかったけどアップルパイを食べたのと、馬車に揺られたので一気に加速して下腹部を襲ったのだ………尿意が。
エステロさんの店でトイレを借りて、個室に駆け込んだところが冒頭。
お花摘みを済ませて、ユリィに聞いていたとおり布でしっかり拭き取ってトイレから出た。
女の子の体は男と違うや。
「お待たせ」
「姉ちゃん、顔真っ赤だぜ」
「気にしないで」
「我慢は体に悪いからしちゃダメよ」
「うん」
ボクが元男だと知るユリィと違ってゼノは知らないから不思議そうに指摘してきた。
さっさと話題を変えよう。
「えっと、これからどうするの?」
「ユミル帝国、帝都【レッドキャッスル】に行きます。ゼノもいるし冒険者ギルドで護衛を雇ってから行くのがいいと思います」
「ボクだけじゃ不安?」
「ヒカリのステータスが凄いのはわかったけど、人数は多い方が良いでしょう」
エステロさんの店をあとにして冒険者ギルドにきた。
冒険者の立場を守るために過去に召喚された勇者の発案によって発足したそうだ。
冒険者だけでなく商人や料理など様々な分野でギルドができた。
ラノベでよくあるとおり、従来の曖昧なシステムを一新したおかげで被害を受ける人間がいなくなり、うまく回っている。
これも知識チートってやつだろう。
人通りの激しい道を流れに逆らってなんとか進むと、青い屋根に剣と杖が交差したシンボルがある建物が冒険者ギルドの建物らしい。
西部劇で出てくるようなスイングドアを押して中に入った。
「お嬢ちゃん、ここは冒険者ギルドだぞ」
「知ってる」
「ガキのくるところじゃないんだよ、帰んな」
こっそり中に入ってこれないように、ゆっくり動かしてもスイングドアはわざと音がなるように作ってあるらしい、ライトノベルから得た知識だ。
音を聞きつけて扉に視線が集まり、ボクを見つけた冒険者の一人が説明してくれた。
答えが気に入らなかったのかロビーにいた他の人がテンプレのように絡んできた。
「依頼人かもしれないのに、いきなり追い返さないでよ」
「なっ」
「邪魔しないで」
絡んできた男の側にズレ、掴もうとしてきた腕を抑える。扉からユリィとゼノを男に近づけさせないように通した。
「ギルドマスターはいらっしゃいますか?」
「いますけど………」
「連絡なく押しかけてすみません、ギルドマスターを呼んでいただけますか?」
「………これは!!すぐに呼んできます」
カウンターまでたどり着いたユリィが、ウサミミの受付嬢に短剣を見せた。
短剣を受取り調べていた受付嬢が表情を変えると2階へと上がっていった。
「ふん」
他の人がカウンターを使うかもしれないから、ユリィとゼノが階段の方へズレた。抑えていた腕を離して、ボクもユリィのそばへと移動する。
「このガキ!!」
「やめとけ、お前じゃ無理だ」
「なんだと………って案内人!?」
なおも絡んで来ようとした男に、入口から忠告の声がとんできた。
入ってきた男を見て、顔を青くして逃げ出していった。
案内人と呼ばれた男は普通にカウンターに行き、受付嬢と話をしはじめた。
「これは、これは、ユリアーナ様どうぞこちらへ」
「えぇ」
ウサミミ受付嬢がギルドマスターらしき人を連れて2階から降りてきたようだった。
ギルドマスターらしき人物はエルフみたいだった、クルトリッタさんと雰囲気が似たお姉さんだ。
ユリィはギルドマスターとともに2階へと上がっていった。
一緒について来るかユリィに目で問いかけられたが、首を振っておいた。
ボクとゼノは1階で待つことにした。
ユリィから説明は受けたけど、この世界の知識はほぼないと言っていい。
ユリィを待っている時間でこの世界について情報を収集しよう。