26話
【アポカリプス】のブレスから守ってくれた、魔女のバフのおかげで【アポカリプス】を倒した……と思う。
オーバーラッシュとでも言うのだろうか、過剰かもしれない攻撃をうけた【アポカリプス】が横たわっている。
正直、これで終わらないと打つ手がない。
「す、すごい」
「やったの?ヒカリちゃん」
いつの間にか来ていた、ユッカとゼノが声をかけてくる。
そういえば、ユリィを任せようとしていたけど《異空庫》へとしまったので合図を出していなかった。
合図がないから心配して来てくれたのだろう。
【アポカリプス】の体が突然輝きはじめた、みるみる小さくなっていくと【ドリアード】と同じような燭台が残る。
「終わったようね」
魔女が燭台を拾い上げると、手をかざし小さな入口のようなうずが空中に現れた。
【アポカリプス】が残した燭台を渦へと入れるとこちらを向く。
「【ドリアード】も、こういう燭台を落とさなかったかしら」
「あったよ、この燭台はなんなの?」
「燭台に幻獣を封印してるのよ、だから【ドリアード】のもいただけるかしら」
魔女の目を見るが悪い人では無さそうなので【ドリアード】の燭台を取り出し、魔女へと渡す。
「いいけど、貴女はいったい?」
「わたしは、ナーム……封印の一族よ」
「封印の一族?」
魔女ナームは周りを見回すと、人が通れるくらいの大きさの渦を作った。
「説明すると長くなるわ、知りたいなら場所を変えましょう……わたしの家で良ければ招待するわ」
「是非、お願いします」
「じゃあ、ついて来て」
ナームと一緒に渦の中へと入った、一瞬のうちに洞窟から森の中へと移動しており目の前には寂れた感じの村があった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ほう……【アポカリプス】の反応が消えたか」
光がない漆黒の世界で、男が【アポカリプス】の反応が消えたのを感じとり呟いた。
「まぁ、少しは貯まったからな次はコイツにしよう」
男が燭台に蝋燭をのせて火を灯した。
灯した瞬間に燭台がかき消えたのを満足そうに眺める。
「今度は、もっと刈り取ってくれよ」
闇の中に男の笑いがいつまでも響いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
寂れた村には戦いの爪痕が深く刻まれていた、どの家屋も半壊していて、村人の姿はなかった。
「嘘!?……まさかとは思ったけど遺失魔法の《転移》」
「慣れれば簡単なのよ」
ユッカが驚いているが、《転移》は珍しい魔法なのだろう。
ゲームでよくみる魔法なので違和感はなかった。
そんなやりとりがあったけどナームの家へと案内してもらい、シャワーで汚れを落としてサッパリして現在に至る。
「人に振る舞う料理なんて久しぶりだから、味の保証はできないけど」
そう言ってナームが作った晩飯を食べた。
ここでも、ユッカがシャワーの魔道具で驚き、水洗式のトイレに驚き、コンロのような魔道具に驚いていた。
魔法使いには夢のような道具ばかり置いてあるのだろう。
「さて、どこから話しましょうか……」
デザートに出されたゼリーのような、ヒンヤリしてプルプルしてる甘いものを配り終えたナームがみんなを見渡しながら聞いてくる。
「この世界がまだ、今よりとても大きな大陸だった時があったの……その時代では天使、人族、魔族が同じ大陸で暮らしていたの」
「天使って……背中に羽が生えた神の御使いとか言われたりする、あの天使ですか?」
「神の御使いって話はないわね……神の産み出した失敗作のほうが正しいかしら」
神は何かを作ろうとして失敗した神族の尖兵が天使らしい、背中に羽があるのは変わらないみたいだ。
「天使と魔族は大陸を我が物にしようと争い、力の弱い人族は天使と魔族の戦いにまきこまれ、数を減らしていったの」
「酷い……」
「そして、あの男が現れた……堕ちた使徒【アダン】が……」
ナームは顔をふせ落ち着かせるように間を取ると続けた。
「天界を追放された【アダン】は、正体を隠して人族に近づいてきたの……【アダン】の人体実験によって、天使、魔族と戦えるようになった集団が人類解放組織【ヴィシャス】」
天使、魔族に対抗できるようになり人族の領域を守ることが出来たらしい。
【アダン】は目的のためには手段を選らばない男らしく、天界を追放になったのも行きすぎた実験によるものだったらしい。
人族に動物の力を融合させる実験で、動物と人の融合体【亜人】が生まれたそうだ。
「人族での実験を終えた【アダン】は、【ヴィシャス】を裏切り今度は魔族のもとへといったの……魔族で実験を開始した【アダン】はいつしか、魔王と呼ばれるようになっていたわ」
天界、人族、魔族で好き勝手やっていたようだ。
「魔族での実験も終えた【アダン】が、【ヴィシャス】へと戻ってきたわ……魔族の実験で得た成果を手土産にしてね……」
「……」
「戻ってきた【アダン】は、有志を集めたわ……これからは防衛だけでなく反撃するんだって」
それまでは天使、魔族の被害が出た時に現場に急行して生き残りを逃がすだけだったらしい、魔族での実験の結果を反映して反撃の手段を得たようだ。
「有志達のおかげで大陸を天使、人、魔族で三分割できるくらいまで盛りかえした時に事件は起こったわ……異世界から神ユミルと【幻獣神】がやってきたの」
ユミルってユミル帝国の王族のご先祖様だったはずだ、異世界からきたとはビックリな事実だ。




