24話
【アビス霊洞】の中は水晶質の岩肌とヒカリゴケのおかげで幻想的な風景だった。
【アポカリプス】との戦いを控えてなければ、楽しめたかもしれない景色を足早に通り過ぎた。
(マッテイタゾ……イマイチド、トオウ……コノムスメヲコロシテ、モトノセカイヘカエレ)
「断る」
(ナラバ、シカタナイ……)
【アポカリプス】が攻撃体勢に入った。
左右の翼に生まれた魔方陣からウロコが飛んでくる。
(ワレガ、メッシテヤロウ)
確か《影刺》だったかな、ウロコの形の魔力を避け、斬って捌いていると【アポカリプス】がブレスの体勢に入った。
【アポカリプス】の向く方向には両手を上にして魔方陣から出た鎖で吊られているユリィがいる、地面からも鎖が出ていて身動きできないようだ。
ウロコでダメージを負いながら、最小限の動きでユリィの前まで駆ける。
「封魔の大剣」
魔法抵抗を高める大剣を《異空庫》から取り出し、盾のように掲げる。
【アポカリプス】のブレスが放たれるが、完成した封魔のヴェールがボクとユリィをブレスから完璧に守ってくれた。
(バカナ!?)
ブレスを防がれて驚く【アポカリプス】を無視して、そのままユリィを助けに入る。
意識がないユリィを《異空庫》へと収納しようとするが、両手両足を縛る鎖が収納を邪魔するので封魔の大剣で斬った。
(ケッカイガ、コワサレタ!?)
鎖が何かの結界だったのだろう、封魔の大剣で抵抗なく斬ることができ、自由になったユリィを《異空庫》へといれた。
(ムスメハ、ドコイッタ?)
「待たせたね、遠慮なくやりあおうか」
ユリィの安全も確保したし、混乱気味の【アポカリプス】にようやく集中する事ができる。
攻撃がとまっている【アポカリプス】に向かって跳躍をすると封魔の大剣を振りおろした。
(グヌゥ)
【アポカリプス】を護るように出た障壁(?)のような物を豆腐かなにか柔らかい物を切るかのように、抵抗なく【アポカリプス】へと大剣が届き、鱗を砕き肉を抉る。
左翼を切断するまではいかず、大剣が途中でとまった。
(アガァ)
【アポカリプス】が痛みに耐えながら右爪を振るってきた。
魔力の爪《影爪》を翼から引き抜いた封魔の大剣で切り払い、消したところに通常の爪がくる。
大剣を滑りこませて爪を受け、そのまま飛ばされて距離をとる。
(イゼンヨリモ、ウデガアガ!?……モウ……カ……)
【アポカリプス】の動きが突如変わった。
暴走というのだろうか、明後日の方向にブレスを吐くので近づこうとしたら、溜めの少ない連射ブレスらしい。
10本撃ってこちらに向かってくるのは4本くらい、シューティングゲームのバラ撒き弾って感じだ。
(ウグッ……ガッアァァアァ)
ブレスが壁、天井に当たり水晶質の欠片が舞った。
壁が崩れ【アポカリプス】に当たる、天井はまだ落ちてくるようなことにはなってないが、このままじゃ時間の問題だろう。
崩れる壁に注意しながらブレスを避けていたら、【アポカリプス】が闇を振り撒いた。
大きめの魔方陣が足元に広がると翼や体から一気に吹き出した黒い煙のようなモノが辺りを包む。
「壁のヒカリが弱々しくても、見えるのが救いか」
あいかわらずブレスを振り撒いているのか、ブレスが壁を崩す音が聞こえる。
「なんとかしないと……!?」
見えないんじゃ何も出来ないと、煙を払う大剣を探そうとしたら、煙が流れてくるスピードがあがって困惑する。
気のせいではなく、尻尾が迫ってくるのを間一髪でガードした。
ガードごと壁へと叩きつけられて肺の中の空気を全部出して苦しくなる。
「……ヤバッ」
近くの壁にブレスが着弾して壁が崩れてくるのをなんとか転がって回避した。
転がった時に封魔の大剣がわずかに煙を払ったのが見えた。
「いけるか?」
起き上がり封魔の大剣を振る、周りからけむりがなくなるが少しするともとに戻った。
「なら……ディバインブレード」
ディバインブレードは、ランキングイベントの報酬でもらった武器という点ではレヴァンティンと一緒だが、威力が高すぎて反動が大きいロマン武器と化して使う機会があまりない武器。
「意外と反動なく振れるな」
一振り、二振りと煙を払い退けると、ゲーム時より反動が少ない。
光の軌跡から魔力のようなモノを感じるのでMPを消費して、反動を軽減しているのかもしれない。
時折飛んでくるブレスを弾きながら、【アポカリプス】へ向けてディバインブレードで煙を払いつつ進んで【アポカリプス】への元へとたどりついた。
「縮んでる?」
煙を出す前と比べてだいぶ小さくなった【アポカリプス】が爪を振るい、尻尾を振り、ブレスを吐きと滅茶苦茶に暴れている。
理性のない瞳がこちらに向いて、ブレスがやみ涎をたらしながら咆哮を放つと、【アポカリプス】は体当たりをかけようと低空飛行で突っ込んできた。
そろそろ決着をつけよう。




