23話
「モキュー?」
今、ボクの目の前には紫色をした変な生き物(?)がいる。
こちらを見つめるつぶらな目、流線型のボディがプルプルと揺れている。
首があったら傾げていそうな、なんでここにいるの?と問いかけてきそうな瞳と見つめあい。
「あれっ?モーキュンとなにやってるの」
「モーキュン?」
「本当だ、モーキュンいるってことは、ここら辺は魔素が強いのね」
モーキュンというのは、魔素の多いところで発生する妖精らしい。
ユッカの説明では自我があるかはわからないが、害はないらしかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数時間前
「【ドリアード】の攻撃から蔦で護ってくれたのって、ユッカだったりする?」
「わたしじゃないわ、おそらく加護じゃないかしら」
【ドリアード】が完成させた植物アタックの直前に、ガードしてくれたおかげでそれほどダメージを負うことなく反撃に転じれた。
ユッカはフェリスの加護の可能性という推測をした。
「森を歩きやすくするだけじゃないんだね」
加護の力で、雑草とか植物が勝手に避けてくれるので踏むことなく快適に歩ける。
薬草や果物の毒の有無や、用途がわかる。
フェリスに加護をもらってから、今までに判明してる加護に自動防御が加わるわけだ。
「あー、あー……ヒカリ?、ヒカリ、聞こえる?」
「あれ?フェリス?」
「【ドリアード】を倒してくれてありがとう、助かったわ」
【ドリアード】を倒したことにより、フェリスの力が戻ったらしい。
フェリスの加護に植物を通しての《念話》があることもわかった。
しばらく、ドリアードの被害地域の手入れを行うから近づかないようにと、【アビス霊洞】の方向を教えてもらい、その場を離れた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【アビス霊洞】
シアンの調べた文献では、【アポカリプス】の封印されていた場所らしいが、森で無くなった魂の安置場所でもあったらしい。
エルフ族の墓地を兼ねた洞窟は、天然のヒカリゴケと水晶質の岩肌で冷蔵庫と化しており、魔素も豊富なことからアンデッド化を防ぐ役割もあったらしい。
いつの頃からか洞窟内を通る風が苦しむ悲鳴のように聞こえるようになり【アビス】がついて【アビス霊洞】と名前が変わったらしく、元々は【霊洞】と呼ばれていた場所だ。
「確かに、悲鳴のように聞こえなくもないね」
「女性のような、か細い声みたい」
そんな場所にこれから向かうのだ。
「何かいる」
だんだんと大きくなる風の悲鳴を聞きながら進んでいると、ゼノが何か見つけたようだ。
ゼノの気づいたところを見れば、草が不自然に揺れていた。
少しずつ近づき、タイミングをみて飛びこんだら冒頭だったわけだ。
「こんなにたくさんいるなんて圧巻ね」
紫色のモーキュンが見つめあいに飽きたのか、フラフラと奥の方にいく。
視線で追えば水色、緑色、赤色、金色、黒色と様々な色のモーキュンが浮遊していた。
流線型になったり、綿菓子のように浮いたり、固まったかのように動かなかったり、いろいろなモーキュンを見てると自我は無さそうな感じもする。
「やっぱりダメね」
「……」
ユッカが手を伸ばしてモーキュンをさわろうとしたが逃げられたようだ、ゼノが呆れたようにみているからお腹がすいて食べようとしたのかもしれない。
「これから【アポカリプス】と戦うんだし、少し休憩しよっか」
「そうね、落ち着かないけどしょうがないわね」
《異空庫》から出した食べ物をゼノが配るのを手伝ってくれた。
食べ物が珍しいのか、モーキュンが群がってきたので離れた場所に置いて、眺めながら休息をとった。
代わる代わる群がるけど食べる様子はないから、モーキュンは食事などしないのかもしれない。
モーキュンのさらに奥にポッカリと口を開けた、悲鳴のような風を吐き出す【アビス霊洞】、ついにここまできたんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【アポカリプス】戦について役割を確認した。
身体強化も覚え、トレントや道中の狩りでレベルアップしてるとはいえユッカとゼノも戦闘に参加するにはキツイかもしれなかった。
《限界突破》があるから一撃はいれてもらいたいが、数々の逸話がある有名幻獣の【アポカリプス】で無理しなくてもいいだろう。
ユッカとゼノには今後も幻獣退治につきあってもらうことになるだろうから。
「今回はボク一人でいくよ……ユッカとゼノにはユリィを助け出して欲しい」
「ヒカリ姉!?」
「ダメだよ」
ゼノの双猿刀なら【アポカリプス】とも戦えるかもしれないが、置いてかれることにショックを受けたようだ。
ユッカがゼノの肩に手を置いて首を振る。
「安全になったら合図を出すから、お願いね」
「わかったわ」
「……」
ユッカにゼノを任せて、一人【アビス霊洞】へと入っていく。
いよいよ、【アポカリプス】との対決だ。




