19話
疲れ抜けない
結界を抜けた先では豚と木人が戦っていた。
豚は【神宿りの森】の警邏隊と名乗り、木人が侵入者だと言う。
槍を引き戻した木人が距離をとって腰を落として構えた。
「話してる場合じゃないか……ボクがやるから下がってて」
豚に背を向け反転して木人へと正対して攻撃に備える。
木人は様子をうかがっているようだ。
「ここで見てくるなんて……意外と手強い」
とはいえにらみあってても仕方ないので、こちらから仕掛けよう。
一足で相手の懐に飛び込むとアースブレイカーを振った。
アースブレイカーを上体を反らすことで回避する木人。
反らした上体を元に戻したら反撃に移るのは予測出来るのでさらに追撃を入れよう。
その場で勢いを緩めずに回転すると斬りおろしを加える。
上体を反らした状態からボクの追撃を片足を後ろに下げ半身になり紙一重で避ける木人。
「強い……でも」
木人に避けられて地面に着いたアースブレイカーで素早く三点を突く。
木人がカウンターをとりにきたところにアースブレイカーで生成した《礫》が襲いかかる。
死角からの攻撃を受け腕が明後日の方向に飛んでいった。
《礫》が集中して当たった腕が弾け飛んで、ビックリしたけどコイツ木なんだよね……人相手じゃこうはいかなかっただろう。
「ヒカリちゃん、どう?」
ボクの帰りが遅いので様子を見にきたユッカの前に、木人の腕が落ちてきた。
「ユッカ!!コイツ手強いから油断しないで」
「えぇ」
以前のユッカだったら慌てていただろうが、《身体強化》を使いユッカも参戦してくれるようだ。
木人はユッカに気づいたみたいでボクとユッカを交互に見てから地面に自分の手を突き入れた。
「キャア」
「ユッカ!?」
「大丈夫よ」
木人の攻撃がユッカを襲ったようで短い悲鳴が上がった。
視線をそらす隙は見せられないから声はかけたが無事なようだ。
ユッカへの攻撃を終えた木人は、先ほど砕いた腕があったので遠距離攻撃のついでに回収したようだ。
木人は腕を吸収するかのように体に取り込むと瞬く間に腕が生えてくる。
「これで、ふりだしか」
生えてきた腕の感触を試すかのように腕を回す木人を見ながら、こちらも武器をレヴァンティンに変える。
「ユッカ、燃えうつったら消火は頼むよ」
木には火だよね、消火のあてがあるなら心置きなく振るうことが出来るってものだ。
「!?」
木人はレヴァンティンに警戒しながらも突っ込んできた、木人の攻撃に合わせてレヴァンティンを振るうとアッサリと腕を斬り飛ばした。
追撃で胴を薙ぎ上下に別れた木人は動かなくなった。
「やったか?」
「ヒカリ姉、凄かった」
木人を相手にするには、今のゼノには少し辛いかな……火猿をうまく使えば戦うことはできるとは思うけど。
動きを止めた木人から離れて、警邏隊と名乗った豚に近づいていく。
「大丈夫ですか?」
「ああ、すまない」
急所は避けていたようだけど細かな傷が多くて痛々しい豚に《異空庫》からポーションを出して豚に振りかけていく。
すぐに効果を表して傷が消えた。
「こんな効果の高いものを……まだそのポーションがあるなら向こうでやられた部下達にも使ってくれないだろうか」
「……」
「もちろん代金は……ないけど代金分は協力させてもらう」
「良いよ」
TWOでの下級ポーションが、この世界では下級とは思えない効果を発揮したことで考えていたのを、ポーション使用を渋っていたと勘違いした豚があわてて条件をつけてきた。
考えを保留にして返事をすると、豚の部下を助けに向かった。
「シャトル、ブーリン、ハラウミ、フィーレ無事か」
部下達の名前を呼ぶ隊長豚に辛そうな返事が聞こえてきたので無事なようだ。
(シャトーブリアン?にハラミ?にヒレ?……美味しそうな名前だなぁ)
お腹がすいてきて少し不謹慎なことを考えながらポーションを使って回復させていった。
「こっちは私がやるわ」
「任せた」
倒れてた4人の中では軽めの怪我の豚はユッカが回復を施してくれた。
「ヒカリ姉、これ」
「ありがとう、ゼノ」
おとなしいなと思ったら、ゼノは周囲の警戒をしながら木人の素材を回収してくれていたようだ。
ゼノから受け取った素材を《異空庫》へとしまう。
「今回のご助力感謝する……ところで、どうしてこんなところにいたのか聞いてもいいかな?」
「エルフの村に行く途中だったのよ」
ひととおり救助も終えて、ひと息ついたところに隊長豚がやってきた。
隊長豚の名前はサロインとやっぱり美味しそうな名前だったが、《異空庫》から出した飴をこっそり食べたのであまりひかれなかった。
ユッカとゼノもついでに飴をあげた。
微量ながら魔力回復効果もあるのでユッカがもったいないと騒いでいたが、美味しいんだから仕方ない。




