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13話


「悪く思わないでよね」


マッドグリズリーに接近してデュランダルを振り抜いた後に、宙を舞う首に向かって語りかけた。

そのまま手をかざして首を、続けて胴体を異空庫へとしまう。

討伐部位証明がどこかわからないから、ギルドで死体を見せれば証明になるだろう。


今回のマッドグリズリーは泥を武器に戦うタイプだった。

爪や体に泥を纏い武器や防具代わりに使用したり、泥弾を飛ばしてきたり、足元を泥沼に変えて動きを阻害してきたりした。


見かけほど鈍重ではなかったが、それでもボクの方が速かった。

足元さえまともなら負けはしないってくらいには差がある、それがマッドグリズリーとボクの差だった。


マッドグリズリーの攻撃を受けて、衝撃を泥沼からの脱出に利用してボクは岩場に飛び乗った。

すぐさま岩を泥へと変えるマッドグリズリーの攻撃をジャンプして避けながら、着地地点に向かってレヴァンティンを取り出して火球を放った。

泥が焼き固められて埋まらなくなった地面に着地してすぐに体を低くしながら突撃した。

マッドグリズリーは泥で防御をかためたようだったが、構わず足を斬りつけた。

武器の性能がいいからか、紙のように泥ごと足を傷つけた。

しゃがませて下がった首を、斬りつけた勢いのまま背後に回りこんでいたボクは刈取った。

起き上がろうとしていたマッドグリズリーには何が起こったかわからないうちに終わったことだろう。


「これで依頼は完了だね」


マッドグリズリーの好物の花も摘んで異空庫の中へとしまい、ユリィ達のところへと戻るべく道を引き返した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


危険度Bランクモンスターを無事に討伐出来た。

ヒヤリとする場面は少しあったけど、終わって見れば余裕の討伐だった。

今後の課題はうまく魔法を使うことだろう。

今回は《異空庫》からレヴァンティンを取り出して火球を放ったけど、魔法を使えれば《異空庫》からの出し入れの手間が余裕になる。


「まぁ、おいおいってところかな……!?」


そんなにすぐには、うまくいかないだろうと答えを出したところに、何かが燃えたような焦げくささが漂っていることに気付いた。


「ヒカリちゃん……ユリィちゃんが……」

「ユッカ!?……ボロボロじゃない!!、何があったの?」


警戒していたら草を掻き分けてボロボロのユッカが現れた。

《異空庫》から回復薬(ポーション)を出し、急いでユッカに振りかけた。

たちまちに顔色もよくなり効果に驚くユッカに話を続けさせる。


「ヒカリちゃんがマッドグリズリーを倒しにいって、しばらくしたらアポカリプスが襲って来たの、馬車を壊されてユリィちゃんが連れてかれちゃった」

「なんで……ユリィが!?」

「わかんない……コウメイ達がヒカリちゃん呼びに行けって私を送り出してくれたんだけど……そうだ、さっきのクスリまだある?」

「あるよ、急いで戻ろう」


コウメイ達も大怪我をしていたけど、回復薬(ポーション)のおかげでなんとか助かった。

千切れた腕がみる間に回復していく様子は凄かった。

この回復薬(ポーション)は普通のはずなんだけど、この世界だと神薬(エリクシル)並みの効果があるようだ。


大怪我が治ったとはいえ、失った血液は戻らないのでコウメイ達にはシルニスで大人しくしていてもらおうとシルニスへと向かった。

ボクの《異空庫》には意識がなければ人でも入れることができるので、コウメイとフリッツは《異空庫》の中だ。

ユッカが驚いていたけど内緒だよ。

ゼノは意識があったのでボクが背負っている。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「きゃあぁぁぁ……ヒカリちゃん怖いから、もっとゆっくりぃー、落ちちゃう、落ちちゃうから~」

「ユッカうるさいよ、心配しなくてももう着いたよ」


途中からユッカを背負って、ユッカにゼノを背負ってもらいボクが走るという方法で移動スピードを上げたのだけど。

ユッカには異常なスピードに感じたらしかった。


「うぅぅ、世界が回ってるわ」

「大丈夫?」

「!?っうん、もう平気よ」


まだフラつくユッカに下から覗き込むような上目遣いで、心配してるというふうに不安そうに目を潤ませてやれば、大丈夫じゃあなくても平気と答えるしかないよね、言質いただきました。


シルニスには獣対策らしい、背の高くない柵が町を囲むようにして張り巡らせてあった。

町の正門にいる門番がなんだか慌ててるように走り回ってる様子が遠くからでも見てとれた。


「なんかあったみたいだね」

「近くにアポカリプスがでたからじゃないですか?シルニスからでもアポカリプスが見えたんだと思います」

「それだったら、さっさと逃げ出してるんじゃないの?逃げる準備って感じには見えないわ」


ここで話していても真相はわからないので、直接聞くのが一番だろうから、門番の一人をつかまえよう。


「あのー、シルニスは初めてなんですけど、通行税とかありますか?……慌ててるみたいですけど、なんかあったんですか?」

「ようこそシルニスへ、お嬢ちゃん。通行税はないけど代表者の登録をしてもらうことになってる。待ってな……この水晶玉に魔力登録してもらう」


門番は詰所らしき掘立て小屋に入ると中から水晶玉を取って来るとボク達を見回してからユッカに水晶玉を渡した。

ユッカがこっちを見るけど代表なんて誰でもいいだろうと首肯くとあきらめたように魔力登録をした。

一瞬淡く光っただけで登録は完了したようで門番に水晶玉を返す。


「それで?」

「あぁ……ルーリクが幻獣にやられて、壊滅したらしくてな……生き残りがたどり着いたから慌ててるんだよ」

「なんでルーリクが……」

「さぁな、しばらくはどこもかしこも慌ただしくて落ち着かないだろうが、ゆっくりしていってくれ」


そう締めくくって門番は作業に戻っていった。

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