11話
おかしいな、予定よりストックが増えない
服飾店でユリィと店主の着せ替え人形と化したボクとゼノが解放されたのは夕方になってからだった。
「本日は大量のお買い上げ、ありがとうございました」
「デザインも良いし、気に入りました。また来ますね」
「次来るときも、是非とも色々と着て下さい」
「「勘弁して~」」
ゼノと二人で降参の意を示す、ふと周りを見回すと他の客もこちらを見ていた。
見せ物にでもされた気分だ、カネとるぞ、ちくせう。
他の客からも今度着させてくれとのお願いをやんわりと断り、店を後にした。
大量の衣服は人気のないところで異空庫へと仕舞いこんでいるから荷物はない、んー便利過ぎる。
みんな動きやすさ重視の買ったばかりの服に着替えて宿へと戻った。
ボクも大きめのトレーナーからワンピースに着替えた。
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風呂は貴族の、それもよほど変り者でもないと手を出さないようだ。
この世界では魔法が生活にだいぶ入り込んでいるので、見た目が中世っぽくても文化は中世とは一致するものでもない。
なぜ今この説明が入るかというと──
「じゃあ、いきますね………《洗浄》」
魔法陣から風が出てきて体を撫でて行く、すると汚れを分解して清潔にしてくれる魔法がある。
「《乾燥》」
今度は《洗浄》で濡れた体や衣服から水分を取り払う魔法陣、魔法陣から風が通り過ぎると水気がなくなり元通りになる。
「ありがとう、キミ凄いね」
「これも仕事ですから」
この世界には洗浄屋と呼ばれる仕事があるそうだ。
使う魔力が少なく、魔法を使える子供の憧れの職業になってる。
料金は一回銀貨2枚で1ヶ月40日間、わずかな時間働くだけで一般家庭の生活費の半分近く稼ぐことができる。
生活していれば発生する汚れをターゲットにしているのも、無くなることはない安定した職業とも言える。
宿に帰り夕飯を食べたところで、洗浄屋の子が依頼はないか聞きにきた。
食べる前に来て欲しかったけどね、物珍しいから体験させてもらったのだ。
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お腹も膨れ、体もキレイになったことで早めに就寝することにした。
「う~ん、トイレ~」
下腹部にお馴染みの感じが襲ってきたので、目が覚めた。
お花摘みにいこうと隣で眠るユリィを起こさないように、ベッドを抜け出した。
用をたすためにトイレまではきたのだが、問題が発生した。
「むぐぅ、まずい」
ユリィに着せ替え人形にされた時に下着も買ってもらったので、今穿いているのは所謂かぼちゃパンツ、ドロワーズなのだが早く終わって欲しくて意識を手放していたので脱ぎかたがわからないのだ。
このままでは、せっかく買ってもらったモノを汚してしまう。
「はうっ」
強引に下ろそうとしても引っ掛かってうまく脱げない、無理矢理脱ごうと思えば引き千切ることになりそうだし、このままだとお漏らししてしまい、お姉ちゃんとしての威厳がなくなってしまう。
「これはっ!?」
いよいよ、最終手段で引き千切ることにするかと手をかけた場所に紐の感触があった。
焦る手つきを落ちつけながら紐を解けば、引っ掛かっておろせなかった部分がおろせるようになった。
「危なかったぁ」
間一髪で漏らすことなく用を足して戻り、ふたたびベッドへと潜りこんだ。
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「ヒカリ、そろそろ起きて」
「う~ん………おはよう」
ユリィの声と体を揺すられて目を覚ました。
顔を洗いさっぱりしてからトイレに行って用を足した。
二回目ともなるとドロワーズの脱着にも慣れた。
女としての階段を1段登ったような気がするが、今の体は女だから気にしたら負けだろう。
「おはよう、ヒカリ姉ちゃん」
「ゼノ、おはよう」
「宿の人に行ってお弁当作ってもらったから、途中で食べましょう」
まだ薄暗い中、宿を出たボク達が門についた時には日が昇り明るくなっていた。
門にはすでにコウメイ達が馬車を用意して待っていた。
「待たせちゃった?」
「俺達も今来たところだ」
リッタ大森林へと去ったアポカリプスは気になるけど、それほど急ぐ旅でもないのでレッドキャッスルにはまっすぐ向かう無難なルートでサウザンドを後にした。
大急ぎならリッタ大森林を突っ切ってかつての大戦の名残りがある浮島群という厄介な場所を抜けるルート。
海側まで抜けて大回りで行く観光ルートがあったのだが、観光ルートは後でのんびりと楽しんでみたいと思う。
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ほどほどに整備された街道のおかげか、あまりモンスターに遭遇することなく順調にレッドキャッスルへと進んでいた。
「ユッカ、そっちに行ったぞ」
「任せて、《火球》」
ユッカの足元に魔法陣が描かれると火の玉が4つほど現れて、ユッカの方に向かっていた槍を持った猪のモンスターに殺到する。
「ブモォー」
ユッカの《火球》が見事モンスターをやっつける。
モンスターに遭遇してもコウメイ達がすぐ倒すのでボク達の出番はあまりなかった。
ゼノように兎などの新人向けの依頼が出てきた時は、経験を積ませる為にゼノにやってもらったけどね。
「そろそろ、【ルーリク】に着くはずだから」
「ってことは半分くらい来たんだね」
コウメイの言葉を聞きつけたボクはもらった地図を確認した。何事も問題なく中間地点にある【ルーリク】へと着くようだ、レッドキャッスルまであと半分だね。




