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1話

 会場全体が今か今かでの喧騒に揺れている。

 この大きなステージを包み込むほどの人の量は何回見ても圧倒されてしまう。


 始まるまで目を瞑り精神統一をする者、

 始まってもないのにサイリウムを振る者、

 無事開始してくれと祈る者。

数多の人間がステージの上を熱気の渦で埋める。


「行ってきます。」


 私はそう一言、背後(うしろ)へと声をかけて熱気の渦に飛び込んだ。



--------------------------------------------------------


「昨日ね!遂にYuuu(ゆうみ)のライブに行けたの!!!」


「え⁉︎マジ⁉︎」


「マジ卍だよ!!!」


 月曜の気だるい朝から浮かれた話し声が聞こえてくる。

 

どうして女子高生という種族は朝からこんなにも元気なんだろうか。


群れて、煩くて、ダラしない。


そういう思いであったが気になるワードが出たためチラッと様子を伺ってしまう。


「セットリストも神でさ〜、新曲も発表されたし!マジ行けて良かったぁぁ〜〜!」


どうやら僕の事に関しては何も話していないようだ。


「いいなぁ...っ!」


「ん⁇マキどうしたん?」


「...いや、陰キャくんと目があってさ。」


「うわっ、慌ててあっち向いてる。キモすぎなんですけど...。」


「ねぇ、トイレいこ。」


「いいね、莉奈ついでにアイライン描いてよ。」


「ん、おけ、そうしよか、でさー...」


 どうやらまた僕こと美原 優の株は下がったらしい。


まぁ、無理もない。


 目を隠す長めの前髪、年中マスク、そんな僕だ。

自分から見ても僕の姿は不審者のソレであった。

手足は細く女の子みたいに華奢な身体。


 (ヤク)でもやってるのでは?と噂になったこともある。同時に名前のせいもあって女の子疑惑の噂も流れたが戸籍上ちゃんと男である。


 確かに僕は女の子っぽいし、男だとしたら不健康に見られるが、肌はもちツヤ、目はぱっちり二重で唇ぷるるんとしてる。

よく人の顔をみずに陰キャくんと呼ばれるのは頂けない。もちろん顔見せないようにしてるのは僕だし、その責任は僕にあるから何も出来ないが。


 しかし、あの反応だと何も気づかれてないようで良かった。


そう、僕が世界で一番人気のアイドルYuuuなのだから。

新作

なんでも出来るよ、山本先生‼︎

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