6話 当たり前じゃない、当たり前
遅くなりましたが、投稿です。
この回で変身するはずでしたが、出来ませんでした(TT)
午前中から昼に掛けての商店街の喧騒なんて、どこも同じだと思っていた。
人が多い。どこ見ても人間だらけ。暑い。一方通行。ガヤガヤ。
ざわざわ、じゃないぞ。
しかし、まさか異世界でも商店街も変わらないとは、って驚かない。まあ、想定範囲内ってやつだ。
驚いたのはアヤが安全運転で、30分間車を運転してここまで来たことだ。
ヒロシ? 免許とってないらしい。いつかとんでもない乗り物を作るので既存の機会など、とは言っていたが、その機械もきっと運転免許は必要になるんだぞ。
ちなみにオレはペーパーだが持っている。
持っているが、日本のだからヤマトで通じるわけもなく。
そもそもカバンの中なので、運転しようものなら無免許運転。
車の仕組みも日本と変わらず。ガソリンでハイブリット。
とにかく、商店街というと閑古鳥が鳴きそうだが、ここはそれなりに人が多い。
人の熱気が、熱くて何でこんなところに、と疑問に思うが、
オレの普段着の購入のためには、そんな疑問は些細なもの!
ヤマトでも通貨単位は円。そして、オレの手元には10万円!
とりあえず、普段着なので適当に見繕って、余ったお金で本とか買おう。
ゲームもいいが、変身すれば色々と事欠かないので、本がいい。
「どうだ、ヒロユキ。ここがヤマトの商店街だ」
まあ、私にとっては普通の商店街だがな! ってヒロシの所有物ではない。
「あたしんちはここから近いから一旦帰るけど、2時間後くらいにここに戻ってきてね!」
アヤはそう言いながら去っていくも、あ、アイスクリーム購入したぞ。車の中では食べにくいと思うのだが。
「まあ、とりあえずこのスーツのままだとつらいから、はやく普段着を着たいよ」
そう、オレは日本のスーツ姿。靴は革靴。
サラリーマンではなく、喫茶店の料理担当なので、スーツである必要性はない。
だが、これしか外に出て着るものがないんだよ。
あと、このスーツを保管するようなものも欲しい。
日本にいつか戻るとき、この服を着たいと思うのだ。
「じゃあ、あそこなんてどうだ」
ヒロシの外出着は黒ジャケットに白と黒のボーダーシャツ、紺のジーンズ。ってどこの雑誌参照だ。
着こなしてやがる。周りの女性の目線がたまにヒロシに向いている。ちょっとむかつく。
そんなやつの指した先は、
「どーみても高級感しかないが」
「私がよく買うところだが」
「値段は?」
「いや、普通じゃないか? ヒロユキの手持ちできっちり上下ワンセット買えるぞ?」
「すまんが、高級志向じゃないし。むしろないのかそれなりの品質とそれなりの金銭で買える店は」
誰が高級店で、1着だけ買うと? ヒロシの金銭感覚は恐ろしい。
なお、確認したらワンセットで安くて10万。後は青天井。
うらやましい変人っていうものは、実にむかつくものだ。ああ、とてもむかついてしまう。
だが、オレは常識人。オレは大人だ。
その苛立ちは別の方向に向けるとして。
「じゃあ、あそこか? 私は一度も買ったことはないが、衣類系量販店だな」
「あ、あそこは、まさか」
ユ○クロじゃないか! まさかのあの!
あ、違う。何かが足りない。アンクロになってる。
「じゃあ、買ってくる」
「待て、私も行こう。この世界の常識はまだ分からないだろうからな」
男の買い物など、数十分で終わるのだが。
しかし、確かに何かが原因で異世界人とバレても困る。
この世界では異世界人=おまわりさーんこいつでーす。という流れになるからな。
それに、ヒロシの見立てであれば、そんなに悪いファッションにはなるまい。……たぶん。
服の量販店で買っていいもの悪いものって確かにある。
それは、ファッション雑誌とか読まないと分からないと思う。
そして、変態科学者。
どう考えても、ファッション雑誌なんて読むやつじゃないだろう。
変態で、科学者だぞ。かなり失礼だと思うが、それでも。
ファッションなんて入り込む余地なんてないはずだ! ……はずだよな?
そう思っていたことを全て覆すのが天才科学者、だそうで。
曰く、「女に受け入れられるとか男に受け入れられるとかではなく、あくまで着る人間が栄えるようにコーディネートするだけだ。あくまで着るものというのは本人の付属品である。だが、本人の好き勝手に着るものではない、そこが難しいのだが、そこはなに。私がいる限り問題はあるまい」と。
見事に、お洒落から普段着までのレパートリーを網羅した服を購入することになったのでした。
すごい、すごいよヒロシさん。
「本当に助かった。これで何とか普通に外出できそうだ」
「コンビニくらいまでにしておけよ? 下手な行動でばれるわけにはいかんのでな」
「そうなんだよな……」
両手の服の入った紙袋は、明日以降のオレの行動に少し刺激をもたらしてくれると思う。
ただ、外出には異世界人とばれるデメリットも存在する。
注意しないと。
と、店の外に出たオレたちに人の波が押し寄せるような感じ。
もしや、バ レ ま し た ?
「逃げろ! 異世界人が暴れてるぞ!」
「どけえ! 逃げろ! 逃げるんだ!」
「危ないでしょ! どいて!」
「キャー!!!!」
阿鼻叫喚と人の波。さすがに紙袋は死守するが、人の波には逆らえそうにない!
「ヒロシ!」
いくら天才でも打開は無理か。名前を呼んでも反応がないし、視界を何とか全方位に振るが、見当たらない。変に動いても地理が分からない。
波に流されればどうにか安全ではあるが、どこに行き着くかは不明。
事態の収拾に警察が来ることは間違いないと思う。
逃げた人間一人一人に身元確認とかはないだろうが、万が一を想定するなら、遭遇するのも危ない。
ということで危険な状況に陥った場合、その一。落ち着いて安全な場所に退避して情報収集。
この世界で生きるための常識としてヒロシの本に載ってたんだが……。
周りの人を見る限り、そんなの守られていない気がする。
人は、自分の危機に関しては自分優先だよね。一般人なら誰だってそうだろう。
生きるためなら、常識などは打破しなければならないのだろう。
今日だけで、色んな常識が打破された気がする。
とにかく、オレのやることは……。
・安全な場所に退避
・ヒロシと合流、もしくは数十分後に来ると思われるアヤと合流
・警察との遭遇の回避
・問題となっている異世界人と思われないように一般人として振舞う
となるが、どうするか。
ヒロシとは合流は難しいだろうが、アヤとの待ち合わせ場所であればたやすいだろう。
地理さえ分かれば。ゆっくり商店街の案内板を確認する余裕など、ない。
それに、この人の流れに乗れば安全な場所にはたどり着けるかもしれないが、警察がいる可能性が高い。
さらに、一般人として振舞えるかどうか。勉強はしたが何でバレるかなんて、分からないからな。
……地理ならあるか!
スーツのジャケットの裏ポケットに、ボタンできっちり外に出ないようにしたICレコーダー。
もといユナイドライバーの出番……だが。
ヒーローは、正体をばれてはいけないのだ! とヒロシが力説していた。
場所が、ないぞ! どぉおおすんの!
次回は、閑話を入れてその後ようやくの変身です。
技とか強化案とか最終回とか作ってあるのに、なかなか話が進まないとは……。