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異世界で、変身ヒーローやりました。  作者: ヤガミタケト
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閑話 私はやはり、天才である

佐々山ヒロシが黒川ヒロユキと出会う少し前の物語。

佐々山は結構黒いのですが、根っこは熱血漢です。そして文武両道。

そもそも、組織に属するということは、難儀である。

決められた業務やノルマというものが存在する。


いわゆる成果を出さなければ、悪なのだ。


プロセスというのがいかに重要であるかというのを近年の組織および社会は、

非常に軽視していると、私は思うのだ。


天才である私が、思うのだ。間違いはない。

凡人はどうだか知らないが。


佐々山ヒロシ。

敬愛すべき父と母が、私に付けた、愛すべきマイネーム。

だが、父と母はいない。


私が、嘘八百で安全な場所へ引越しさせたのだ。

田舎中の田舎だが、両親は喜んでくれた。親孝行ができた。

お金は十分ある。医療や交通機関は不便だが、正義や悪もない平凡な余生が過ごせるだろう。


兄弟は、妹がいるにはいるが、連絡はとってない。

天才である私に遠慮をしているのだろう。

半年前メールをしたら、返事が来ない。


仕方あるまい。ツンデレ屋さんめ。私は許そう。


「ふう……。これでよし」


話がそれた。


重要な点は一つ。

この組織を抜けることだ。


それなりにはいい組織だった。

研究もはかどった。基礎理論の構築に必要な膨大なデータ収集には役に立った。

SMSC機関の技術論文など、一般でも公開されないものが、一部ではあるが手に入れることができた。


だが、未練はない。

むしろ、その奥底にあるものを見てしまったがために、

今の私には、嘆きと怒りしかない。


そう。天才にである私にも、倫理というか正義というものはある。


わがままとか、奇人変人呼ばわりなどされたが、そんなのは褒め言葉だ。


何故なら、惰性に流される凡人どもとは違うのだよ! 凡人とは!

大切なことなので、強調してみた。



私個人に宛がわれた研究所は、実にシンプルだった。

机、椅子、パソコン、プリンタ。後は紙媒体の資料。本が数冊。


一時期はごみ屋敷か、と思うくらいだったが、……いや、あれは、最適な場所にそれぞれ配置しただけだ。

片づけが面倒ではなく、あくまですぐ読むためだ。


って、なぜに言い訳をせねばならんのだ。



ちなみに今は、最後の掃除だ。

数時間後、私は脱走する。

この場所に設置されている監視カメラには、すでにダミー画像をかませてある。


ただ、少しでも時間稼ぎをするために、もう少し念入りに、情報操作をする必要がある。

私の相棒、そして世界を正しく存在させうるヒーローの出現にはもう少し時間がかかる。


私の本拠地にセットしたPCと連動した腕時計型PC。

残り時間は3時間を切った。



ファーストコンタクトはどうなるだろうか。

失敗すれば目も当てられない。

だが、今までの膨大な量のデータの蓄積と私の力を信じる。



目には目を。歯には歯を。

子の理論でいくならば、この世界を正すには、この方法しかない。


世界の異物には、異物をぶつけるしかないのだ。


そう。

異世界人には、異世界人を。



例え、私の相棒になる人間が、粗野で我侭なやつだろうが。

使える駒にして、使い潰してやればいい。



私は、この世界が、この世界に生まれ育つもののためであればいいのだ。


変身装置を、再度確認する。

白衣の右ポケット。

軽量かつ小型であるそれが、重く感じる。


自分で使えるならば、苦労などしない。

自分でこの組織を潰そう。


だが、この装置は、私の相棒にしか使えない。

作ったのは私だが、理論は私のものではない。

組織の賢者たち、--いわゆる科学者たちによる理論でもないらしい。


調べ上げた結果、これから来る私の相棒の波長にしかマッチしないのだ。


ちなみに同じ理論で組織が作り上げた変身装置を、戦闘員やこの世界の志願者に試したところ。

とんでもない重力がかかったかのような状態になり、即死。


組織として、即座に研究は凍結。


問題になったのは在空間力理論。

空間が空間として存在するがためには、一定以上の空間としての力が存在する。

その力を運動や精神などのいわゆるエネルギーに転換するという理論だ。


聞くだけで、夢のようなエネルギーだが、太陽光や風力などの自然エネルギーよりも、

つかみどころのないエネルギー。空間だからか。


いや、誰がうまいことを言えと。



そんな理論で作り上げたこの変身装置。

作る私は天才だが、マッチする人材を調べることができた私はやっぱり天才だ。


そう、私が天才だ。すばらしい。さあ、ほめろ。


よし、気分は上々だ。


「よっし、準備は整ったか」


研究所の片付けは終了。PCやその他のデータは数分後、物理的にクラッシュだ。

復元できても、私の秘蔵のエッチなデータだ。一部は大喜びだろう。

本も大したことがないものだ。ただ、私が書いた本だ。


『天才は私だ』『天才を作るには ~私を見ればいい~』『こたえってなあに? それはわたしさ』


ビジネスから童話まで書いた私の才能にクラクラしてしまいそうだ。

サインもしてあるから、家宝にしてもいいぞ。


指差し確認、よし。

準備体操。ここからは、運動の時間だ。

私は天才ゆえに、運動もできる。

フットサルを試合時間ずっと走り続けても、大丈夫な程度だ。


さあ、行こう。

「ここから、この世界の反逆だ」


ドアを引く。引き戸だから。

自動じゃないのがつらいところだ。格好がつかない。



全ては私の計画通り。

予定通りの廃工場で、突っ立っているスーツ姿の青年。いや、中年に差し掛かる手前か?


「……オレの名前は、黒川博之。ヒロユキって、ヒーローがゆく、って感じで

 自分でもいい名前って思ってる」


何だかボソボソ言っているが、この状況では仕方あるまい。


私の向こうには戦闘員複数。

現実逃避もしたくなるだろう。異世界人といえど、心境は変わらないか。


「よし、ヒロユキとやら。心の声が漏れているのはどうでもいいが、目の前を見ろ」


問題はここからだ。この異世界人を変身させる。

そして、この場を圧倒的に殲滅する。颯爽と本拠地に戻る。


この変身装置と、今までの異世界人のデータから想定するに、

変身後のテンションはただ上がりの状態。


この私の計画に狂いはない! ビバ天才!



「どうなっても知らねぇ!!!!」

変身した! ユナイドライバーをICレコーダーとかなんとか言ったが、計画通り。


黒の流動金属を利用したボディースーツ。

一部金属は強化・保護のため流動体ではなく固定されている。

具体的には背中のランドセル部分だな。

なお、足部、膝、肘、頚部には流動的な金属と固定金属のハイブリット。

顔については、マスクだが、見た目流線型で、目の部分にバイザー。

どこぞの主人公メカか、と言わんばかりだ。


いや、主人公になってもらわなければな。


そのバイザーから、デュアルアイが、静かに、だが強く。緑を帯びた白い光を称える。


起動成功だ。

さあ、戦闘員を倒しここから始まるのだ。この世界のための戦いが!


「えーと、戦闘員さんたち? でいいですか? よく分かんないですけど、もう止めません? オレもよく分かんないのでっ!」


次の瞬間。

私は、考えがまとまらなかった。

この天才を、凌駕する行動。

まさか、こうなるとは思わなかったのだ。


黒川ヒロユキ。


初陣で敵から逃げたヒーロー。

それは恥ずかしいことかもしれない。

私もそう思っていた。



だが、今しばらくして、思っている。今は違う、と。

人間らしい、ヒーローだ、と。



そして、何よりも。


天才である私の相棒は、そういう男でなければ務まらないのだ。

常識を打ち破り、天才さえも凌駕する。


それが、ヒーローだ。



今日も、私の戦いは続く。

私たちの戦いは続く。


「ヒロユキ、天才である私はやはり天才だったぞ!」

「朝からテンション高いのは確かに天才ですよねー(棒」


今日もまた、始まる--。

次からようやく本拠地で活動します。

地味に。変身? しても活躍するとは限らないですよ(笑

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