1話 よく分からない、変身!
初投稿です。
ぼちぼちと続けていければいいかなと思ってます。
男なら、一度は憧れるのがヒーロー。
警察官や消防士、職業にも色々あるが、共通しているのは1つ。
人を、助ける。救う、っていうことだ。
オレだって、子供のころは憧れた。
人に感謝されて、弱きを助け、悪を挫く!
そんな、ヒーローを夢見てたのさ。
で、大人になったオレは、そんなヒーローには……、なれなかった。
理由なんていくつもある。
体力がない。
怖いものは怖い。
暴力反対!
まあ、とにもかくにも、オレはヒーローになれなかった。
いつの間にか36歳。
そんな中年男性。彼女? そんなのいない。そういう関係になる雰囲気になったことは3回くらいあるけど、まあ撃沈。
そっちのほうはもう、どうでもいいか、って感じだ。
職業は中小企業の事務職だ。下っ端で、上司や同僚にこき使われる。
で、自分の仕事が終わらなくて、残業。
できないやつ、のレッテルを貼られて、もしリストラがあったら、有力候補なんだろうな。
そんなオレの名前は、黒川博之。ヒロユキって、ヒーローがゆく、って感じで自分でもいい名前って思ってる。
「よし、ヒロユキとやら。心の声が漏れているのはどうでもいいが、目の前を見ろ」
いや、誰にだって見たくない現実ってのがあって。
目の前にはあからさまに見るからにしわくちゃの、―-洗濯しろよ、黄ばんでるぞ。
白衣を着た怪しいメガネ男(見た目中年)が、目をきらきらさせていた。
マッドサイエンティスト、ってやつだ。見たらみんな言う。
暗いところで、「私は天才だ!」とか言いながらパソコンとにらめっこするやつ。
「行動については否定しないな。だが、この私は真っ当なサイエンティストだ! マッドじゃない! そこのところは理解するように」
まあ、そんなのはどうでもいい。
目の前が、いわゆる特撮の戦闘員みたいな、黒一色のタイツに……、パワードスーツ? 小型のランドセルから手足に付属している金属片。
それらをつなぐチューブ。
世界は、ここまで進化した、ということか?
そんな戦闘員さんが7名ほど。
「逃げても無駄だぜ、佐々山博士!」
戦闘員さんもしゃべる時代ですね。そうか、汚い博士は佐々山と言うのか。
「ふん! 逃げてはおらんし、貴様らのやり方はどうもきなくさい! 信じられないのでね」
「だが、貴様の後ろに居るひ弱な人間に何を頼る? 我々が倒せるとでも?」
まさか? そんなことできるわけないじゃん。悪いが体育の評価は過去最高5段階評価で2だったんだぞ、オレ。
今ここにいることでも早く逃げたいのに。
なんて迷惑な! なんて博士だ!
「というわけでだ、ヒロユキ。変身してケチョンケチョンにしてやるのだ!」
大声で言うなよ! 戦闘員さんがちょっと引いたぞ。
……オレも引いた。びびった。
って、変身、だと?
「いやいやいやいや! 待てよ! 何言ってんだ!」
「というわけで、ほれ」
ICレコーダー。
投げられたそれを、両手でキャッチ。
いや、これで何をしろと。録音か。フルボッコにされる現場を録音。後から警察に提出、と。
やるじゃないか! 博士。 でも、死んだら意味ないじゃん!
「逃げたほうがいいって!」
「やつらのスーツは通常の人間の約3倍の瞬発力を」
「ああああ、やっぱりパワードスーツなのか」
パワードスーツ? と佐々山が不思議がったが、そんなのはどうでもいい。
いかに、無事に逃げるか。それだけだ。
逃げ足に、自信はないが。体力ないからね。
「だから、それで変身しろと」
「ICレコーダーで変身なんてできるかよ!」
「は? 何を言っているかよく分からんが、真ん中のボタンを押せ! 後はなんとかなる!」
「再生ボタンでなんとかなるか! せめて録音ボタンだろうが!」
「いいから早くやれ!」
ICレコーダーの真ん中にあるボタン--どう見ても再生ボタン。丸いボタンの中におなじみの三角。
ちなみに左に録音ボタン。ボタンの中に赤丸入ってます。
右は、何もついてないボタン。
こんなんで変身できたら、ベルトしてる人たちは困るだろうが!
だが。そのことは後から考えよう!
「どうなっても知らねぇ!!!!」
再生ボタンを押す。
気づけば、ICレコーダーは手元になく。
むしろ手は、金属なのかそれとも革なのか。黒く静かにそこにあった。
顔は見えないが、そんな黒い金属なのか革なのかを体が覆っていた。
黒い金属片を各所に装着している。
銀の線がそんなスーツの各所にいくつも巡る。
重みはない。
とにかく、何があったか。
それすらもわからないが。
「なっ! 変身ってマジか!」
戦闘員さんたちが、かなり引いてます。
だが、それ以上に、
「やべっ、マジ成功した」
おい佐々山。お前まさか。
ボソッとつぶやいたんだろうが、なんかすごくよく聞こえるぞ。
よし、とりあえず戦闘員さんたちの勢いはなくなったように思える。
ならばやることは、ひとつ。
「えーと、戦闘員さんたち? でいいですか? よく分かんないですけど、もう止めません? オレもよく分かんないのでっ!」
佐々山博士を小脇に抱えて、回れ右。
そして。人類の限界に挑戦する。
こうして。無事に戦略的撤退をしたのだった。
変身しても、活躍しない。
まだ、異世界転移したとも気づいてないです。(もしかして、の程度)
少しずつの投稿になるので、長い目でお付き合いください。
ご意見お待ちしてます。