この世に生まれた意味
人はこの世に生まれ落ちた瞬間から、一呼吸する毎に少しづつ、だが確実に死へと向かっている。
従姉妹が二人目の子供を産んだ。
長女と長男、まさに一姫二太郎という奴だ。
子供を産む、という行為を二度もするなんて、俺は年下の従姉妹をただ凄いとしか思えない。
帝王切開というのは、一体どんな物なのか。
麻酔を使うのだから、当然自然分娩とは違うのだろう。
自然分娩というのは、骨盤が軋む音が聞こえる程の激痛だと母から聞いた事がある。
子宮の中で生物の進化を辿り、ようやく人間の形になって生まれる、というのが妊娠及び出産だと聞くが、子供を産んで以前より細くなった従姉妹の写真を見ると、妊娠というのは随分と体力を持って行かれる物なのだと思う。
俺はこれから先もパートナーを作る予定は無い。
こんな穢れた血筋は絶やしてしまうべきだし、そもそもそういった人間関係が面倒臭い。
色恋が絡むと、万人ではないにしろ人は性格が変わるから嫌いだ。
だから、もし俺が天寿を全うした時、おそらく遺品の処分をする事になるのは従姉妹の誰かになるだろう。
あくまで天寿を全う出来れば、の話だが。
「生き過ぎたりや廿三」
九歳で自殺未遂をした俺にしては、当初の計画よりも随分と無駄に長く生き過ぎた。
九歳の次は十八歳、その次が二十歳。
期限を決めていたにも関わらず、俺はそれら全てを素通りしてしまった。
一応中学生時代は毎日死ぬ事を考えていたが、同時に殺す事も考えていたのでノーカウントだ。
「神は、人に乗り越えられる試練しか与えない」という言葉が本当ならば、この世は自殺者なんていない素晴らしい世界になるだろう。
今日もまた、虚ろな瞳をした自殺者で一杯になった列車が、線香の煙りを引き摺りながら空へ消えていく。
俺はまだ、その列車に乗る事が出来ずにいる。