エンディングノート
もし俺がエンディングノート、つまり遺書を書くとしたら、一体何を書くべきだろう。
年齢的には遺書なんて縁遠い物だが、いつ何をやらかすか分からない俺みたいな奴は、一応普段から書いておいた方が、もし衝動的に自殺でもした時に周りが困らないと思ったのだが・・・さて、具体的には何を書けばいいのか。
取りあえず、大量のDVDとCD、それからフィギュアは中古で売れるだろうからそのまま売って貰うとして、コミックスや画集、雑誌も物によっては売れそうなので、そこはリストアップしておいた方が良さそうだ。
ゲームも、初回版がある物は分かりやすく写真付きのリストを作っておくべきか。
ゲーセンで獲ったぬいぐるみは、状態が良くても売れるかどうかは分からないので、売るか捨てるかの判断は任せよう。
ネットオークションと中古屋を上手く使い分けて遺品を処分し、葬式はしなくていいから、売った分の金を焼却場の利用料に当てて貰うのが理想だ。
遺骨に関しては、海にでもばらまいて処分してくれたら良い。
永代供養だの墓だの回忌だの、面倒な手間はかけさせたくない。
密葬とも呼べない位に最低限でいい。
遺影に使えそうな最近の写真はないので探すだけ時間が勿体ないし、そもそも葬式が終わった後は使い道もないから、遺影は無くて構わない。
献花も戒名も要らない。
万が一、どうしても戒名が必要な時の為に、戒名は自分で考えておく。
お経を上げる坊主も呼ぶ必要がないように、近いうちに自分でお経を読んだ声を録音しておくからそれを使ってくれ。
と言っても、俺は無宗教で神も仏も信じちゃいないから、取りあえず般若心経だけだが。
気が向けば、おまけに般若心経の意訳も録音しておくかも知れない。
所詮、葬式とは残された人が心の整理をつける為の儀式に過ぎない。
綺麗サッパリ俺の事を忘れて貰う為に、遺す側の俺はどうすればいいのか。
色々と考える事は多そうだ。
そうだ、パソコンやらスマホやらガラケーやらのデータは前もって自分で処分しておかなければ。
エロゲーやら何やら、色々と見られるとマズいデータがギッシリ詰まっている爆弾みたいな物だから。
それから、部屋のどこかある、随分昔に書いた詩はどうしようか。
恨み辛みで書いた物ばかりだから、暗いものが多いのは分かっているのだが、あの頃の俺が取り繕う事も出来なかった「日常」を知って、嘘でもいいから同情の涙を流してくれれば、「ざまあみろ、お前らは俺の事何一つ分かっちゃいなかったんだ」と、もしもあるなら「あの世」から、したり顔して嘲笑ってやるよ。