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概念の針
所詮、「絶望」なんて云うのは、願い事が叶うと思ってる奴の愚痴でしかないんだ。
長い長い、生温い「夢」から覚めてご機嫌斜め。
「現実」が気に入らないんだとさ。
バカみたいに膨らみ過ぎた世界なんてもう誰にも壊せないから、さっさと壊れて永遠の夢を見に行けばいい。
きっと今よりラクになれるぜ。
カーテンの裏であんたを見てるのは誰だろうな。
嫌な笑い方がそっくりな、水よりも濃い他人。
掌で当然のように椿の花が枯れていくのを眺めている俺と、花は枯れるものと知らないあんた。
結局何もしてやれないなら、罪深いのはどっちだろうな。
花は朽ちる。
記憶は褪せる。
不可視の時計の歪んだ針は、容赦無く総てを刻む。
他人の概念が俺を追い詰める。




