空漠
最近、食べ物の味はするのに美味しくない。
口に入れた瞬間は美味しいと感じるのに、食べ終わると後味が悪い。
特に味噌汁が駄目だ。吐き気すら覚える程に不味い。
光が眩しい。
テレビや人混みの雑音が煩い。
息を殺して生きている人間にはどちらも邪魔なだけだ。
サングラス越しの薄暗い世界。
ヘッドフォン越しの静かな世界。
心と一緒だ。
何も無い、唯ひたすらに虚無。
誰も居ない。
何の音もしない。
孤独、静寂、自分の呼吸音さえ聞こえない世界。
生と死の間も曖昧な世界。
それは夢と現の混ざる、混沌の世界の落とし穴。
息苦しく、痛みを忘れた躰は毎夜、血を求めて疼く。
甘い酒の誘惑に導かれるまま、吐くまで呑んで眠る日々。
絶対に理解し合えない存在と「親子」でいる関係。
正論が反転し、脆弱な弱点に変わる不条理。
この世界は汚物で出来ているかのように、腐った裏側の笑み。
「神様は乗り越えられる試練しか与えない」と言いながら、サービス残業、休日出勤で命を削り取っていく無能な歯車共。
拝金主義の戦争屋は、今日も銃声を聞きながら満足気に葉巻を吹かす。
たった21グラム地球が軽くなるだけだと弾丸をバラ撒いて、地球を重くする愚行に気付きもせずに安眠を貪る。
そのイカれた眠りを分けてくれよ。
朝陽を浴びる前に眠りたいんだ。
流れ弾に当たって死ぬ夢はもうたくさんだ。




