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長袖の下
私は、綺麗で真っ白な彼女の肌が羨ましかった。
だって、血色の悪い私の腕は両方共傷だらけで、右腕にはミミズが張り付いていたから。
長袖でいられる季節が好きだった。
半袖でいなければ不自然な季節が嫌いだった。
只の長袖じゃ手首は隠せない。
ぶかぶかに余らせた袖で指先まで隠して、それでも違和感のない季節なんて短過ぎるから、私は夏が嫌いだった。
薄い長袖では隠せない程に大きなミミズが私の右腕に住み着いたのは、もう何年前の事だっただろうか。
あの時はそのまま死んでもいいと思っていたから、盛大にやった気がする。
なのに私は誰かの世話になる事もなく、ただ両腕を赤く染めただけで生き残ってしまった。
そして大きな誤算だったのが、このミミズだ。
他の些末な白い傷痕など霞む程に、これだけは大きなミミズとなって、私の腕に住み着いた。
あと何年、どれだけ季節を重ねれば、この忌まわしいミミズは消える?
彼女のしなやかに伸びた白い腕を見て、私は長袖の下の自分の両腕を思い、今日もまた絶望を繰り返す。




