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虎の尾

オヤジが俺という虎の尾を踏んで、俺は初めて親の前で暴れた。


その日の朝、オヤジに「ネットで買い物するけど、何かついでに買うものあるか?」と聞かれた時、俺は素直に「据え置き型のゲーム機が欲しい」(勿論自腹)と答えた。


昼になって「お前あのゲーム(見える位置にあったPS2のソフト)全部やってんのか?」から始まり、そこから「そんな金あるなら自分の分の年金払え」(本当は免除対象なのだが、将来貰える額が減るという理由でオヤジが払っている)とか「ちゃんと貯金してんのか」とか凄い勢いでまくし立ててきた。

だから俺は「ちゃんと貯金はしてるし、毎月自由に使えるお金なんて5千円もないよ」と答えた。

そうしたらオヤジは「はあ?!5千円も使うなよ!」とキレた。

いやそれ俺の稼いだ金だし、そうやって貯めたからやっとゲーム機買うんだけど?

何でキレてんの?


「病院への送り迎えとかバイトがある日の朝食の準備とか、気遣って色々やってやってるんだから、そこ考えろよ」って、つまりは「忖度しろ、金出せ」って事か。


俺は現在進行形で躁鬱病で精神障害者で、家に入れてはいないが唯一の労働者だ。

そこは考慮しないんだな。


何かがぷつんと切れて言葉が出なくなった時、丁度良く母に「昼ご飯用意出来たから取りにきて」と台所に呼ばれた。

そこまでは耐えられた。

でももう限界だった。

台所へ行ったら過呼吸みたいにパニックになって、とっさに包丁を手に取りそうになった。

でも、強制入院になると思ったから何とか踏みとどまって、代わりに冷蔵庫の側面をガンガン殴った。

まず母に止められて、異常に気付いて後からきたオヤジに羽交い締めにされ、「離せクソジジイ!」とか暴言吐きながらもがいた。

母が俺の手を掴みながら「お父さんももう止めて!あんたも!」って泣きそうな顔して止めに入って、それから「手冷やしなさい、あと頭も」って氷出して冷水作って俺の手をそこに突っ込んだ。


そして、少し落ち着いてきた俺が大人しく冷水に手を浸しながら「包丁を手に取ろうとしたけど頑張って踏みとどまった。人殺しにはなりたくないし、強制入院は嫌だから」と告白したら、母はリビングに戻っていたオヤジに「刺されるところだったよ」と注意しに行き、そのせいかは不明だが、オヤジは素早く昼食を済ませて「俺、2階にいるから」と逃げた。


普通の人でさえあまりやらないダブルワークして、さらにもう一個検討中(これはまだ言ってない)な俺が障害者だということは、あの様子じゃ絶対に忘れている。

最近は落ち着いてきていると思っていたが、やはり心にゆとりがなくなっていたのか・・・スルースキルって大事だ。


暴れる、というかガンガン拳を叩きつけていたので手首辺りにアザが出来たし(これは母に湿布を貼られた)、今週は病院に行く日ではないのだが、こういう場合は担当医に会った方が良いのかと悩んでいる。

しかし、側面だが拳を叩きつけていた冷蔵庫の方は大丈夫なのか心配したが、今の所異常は無さそうで安心した。

これで冷蔵庫が壊れていたら、色々と大変な騒ぎになっていただろう。


暴れる俺を羽交い締めにした時、またオヤジが「俺への当て付けか」ってほざいていたので、その分はどさくさに紛れてぶん殴ってやれば良かったと後悔している。

何一つ分かっていないからそんな発想になるんだろうな、とオヤジには心底呆れている。


夕方になり、取り込んだ洗濯物を持ってリビングに戻ってきたオヤジが、母に「何でアイツはあんな事したんだ」的な事を言っていて、その時俺は横になって(半分寝たふりして)音楽を聞いてたので良く聞き取れなかったが、母が「自分だって言われて嫌な事言ったんじゃないの?」と言って黙らせたのは微かに聞こえた。


どうやら次の通院時には、オヤジを同席させた方が良さそうだ。

・・・それで理解してくれれば良いのだが。

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