表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/64

傷跡

傷口が熱を持って、体感温度を不必要に上げている。


明け方、半分寝ぼけながら切り子細工の様に均一なパターン柄を腕に刻んだ俺は、真新しい傷口から滲み出す侵出液の臭いと、数日前に作った傷の治りかけの痒みに耐えるしかなかった。


きっかけなんて特に無かったが、何となく自傷してしまったのだ。


常人には理解し難いだろうが、自傷癖のある奴の中には、こうやって大した理由もないのに自傷行為に及ぶ奴がいる。

ちなみに本人は至って平常心なので、もしそういう奴に出会っても放置しておいて構わない。軽く話を聞く位ならまだいいが、周りが必要以上に騒ぐと、逆効果で余計自傷行為に走りかねないからだ。

まぁ、傷口を見せびらかして同情を買いたいという迷惑極まりない不届者は、いっそ刺青でも入れてしまえばいいと俺は思う。それから半袖でも何でも着て好きなだけ見せびらかせばいい。

そもそも、一般人にそういった自傷痕は見せないようにするのがマナーというものだ。


俺が刺青を入れない理由としては、万が一体調を崩した時にMRIの精密検査が受けられないと困るからだ。

本当は献血をしてみたいが、服用している薬のせいで無理なのは分かっているので諦めた。だが、もう少し病状が良くなれば実現可能な夢なのだ。なのに刺青を入れて、わざわざ可能性を潰す事もあるまい。どうせ田舎、彫り師も居ない事だ。


好きな時に、という言い方はおかしいが、気の向くままに自傷していた方が、精神的に楽だと思う。

俺自身、もう自傷行為に関して何か後ろめたく感じる事も無いし、家族もこの異常さに慣れてしまっている。


傷口、というより血を洗い流してキッチンペーパーで水気を拭き、それから食品用ラップを巻き付けて終了。


昔は何の手当てもせず放置していたが、この処置をすると傷口が服に擦れる事が無いので、多少血が滲んでいても服を汚さずに済む。

そもそもやらないに越した事は無いが、傷の治りも多少マシな気がするので、応急手当てとしてこの方法は、多分正解なのだろう。


そんな風に、傷跡だらけの両腕を見て思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ