睡眠時間
十数錠の眠剤と精神安定剤、その他諸々を貪るように口に入れ、ごくりと一気に飲み込んだ。
それが約四時間前。
一度意識が途切れ、目を覚まして時計を確認すると、恐らく寝付いてから二時間弱しか経っていない。
また眠れない日が来てしまった。
早く眠りたいのに、たくさん眠りたいのに、現実逃避したいのに眠れない。
次に眠れるのはいつだろう。
また夜が来て、同じように眠剤を飲む。
二時間経過。
やっぱり眠れない。
茶色い毛布を手繰り寄せ、首を縮めるようにして体を丸めた。
普段使わない香水が仄かに香って、それをすん、と吸い込んで心を落ち着かせる。
大丈夫、今夜は眠れる。
今日は昼寝もしていないし、部屋の片付けもさせられて疲れている筈だ。
焦らなくても眠れる。
そして、次第に意識がすうっと遠のいていき、目覚めたら記憶が無くなっているであろう眠りに落ちる。
厄介な事に、俺は連続で三十時間以上覚醒していると、いざ眠って目が覚めた時に、眠りにつく前の記憶がほとんど無くなってしまうのだ。
だから、忘れて困るような細かい出来事は、何があったかメモをしておくようにしている。
ぼんやりと目が覚めて、昨日自分が何をしたのかを思い出す。
ああ、今日は覚えていられた。
今夜は無事に眠れるだろうか。
のろのろと体を起こして、少しだけぬるくなった枕元の水を飲む。
仕方ない、起きるか。
まだ体は怠く疲れが取れていないのは分かったが、これ以上寝続けると腰が痛くなりそうなので、諦めて遅すぎる朝食を求めて台所へ向かう事にした。