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7つの精霊で焼飯を作ろうと思ったが、思ったよりも難しかった(白目)

作者: 平丸

連載の方もよろしく!!


『…ハラァ、減ったな』


そんな少年漫画の常套句を口にして倒れている少年がいた。


彼の名前は包 肉太郎と言い、かの有名な精霊遣いとして名高い包家の 次男であった。


長男では無い為に彼は色々自由な身の為にしばしば旅に出るとこうして行き倒れるのには理由がある。



彼は毎回、旅に出る度に自分へ試練を与えて来た。


例を言うとすれば、邪竜を倒す、美女の地縛霊を自分の持ち霊にするなどと言った様なくだらない事から 良く分からないがなんか凄そうな事まで幅広く取り揃えていた。


そしてそれは、自分で定めた鉄の掟として決して試練を突破するまでは決して帰らないと定めた為にこの様な状況になっていたのだ。



今回、自分で課した試練という物は7つの精霊を使い上手い焼飯を作ると言う、他の精霊遣いが耳にでもしたら殺されるのでは無いかという物であった。


彼自身 余り乗り気ではないのだが、決めてしまったので仕方無く7つの精霊を集める旅をしているのだが是迄に様々な土地を巡り6つの精霊までは集め終わったのだが後一つ何を足せば上手い焼飯になるのかと試行錯誤していると遂に金か尽きてしまいこの状況に陥ったのだ。



『くそぅ..もう無理だ適当に集めて作って帰ろ』


(大丈夫ですか?肉太郎後一つですので頑張って下さい。)


肉太郎の弱音を聞いた者が彼の心に直接話し掛けてくる。


『いやね、探すのだってカロリーはタダじゃないんだよ?これ以上動いたら死にそうなんだけど...』


肉太郎は、背後をゆっくりと向きながら答えるとそこには美女がいた。


美女の名前は嫉香といい昔旅に出たときの試練で手にした持ち例なのだが家に持って帰った後辺りから何故か懐かれ俺の背後霊となったという経緯がある。


嫉香は常時 俺の事を見守ってくれる霊 なのだが死因が焼死の為か力を注ぐと火を生み出す事が出来る特技を持つ。




(そうですか..まあ、死んだら私みたいになるだけですし大丈夫ですよ! 結構楽しいですよ、地縛霊。)


『...嫉香さん、貴女は俺に誰の地縛霊をさせるつもりなんですかい?』


(…別に地縛霊じゃなくても、良いですけどね)


『嫉香さん、顔を赤らめながら言うもんじゃないですよ。』


どうやらこの女は俺に早く死んで貰いたいらしかった。


しかし嫉女の思い通りにさせる訳にはいか無いので【精霊調律】を始める事にした。


肉太郎はうつ伏せに倒れていたが気合で立ち上がり袋に詰めていた精霊を行使し始める。


『精霊よ、俺の言葉を聞きその意思を委ねよ...』


彼の言葉を受けた6体の精霊達は袋から飛び出しそれぞれの与えられた使命を全うしようとする。


『鍋の精霊よこの現世に顕現したまえ』


その言葉が通ると肉太郎の手に滲む鍋の取っ手が現れると徐々に完全な物に仕上がって行く。


軽い...まるで羽の様だ。


その鍋は単なる普通の鍋に見えると言うのに使用する人間からすると全然違う者だった。


肉太郎は続けて食材の精霊達を具材化、もとい具現化させる。


『米、チャーシュ、ネギ、卵の精霊達よ、其々の最適解である大きさで顕現せよ。』


鍋から数メートル上空へ、それぞれの精霊達が形を変えて具材となり上がる。


しかし、此処で肉太郎は精霊遣いとして失格な事をしてしまう。


『よしっ、順調に進んで..ハッ!顕現させる順番を間違えた!!』


精霊を扱う人間にとって順序という物は、とても重要な位置に置かれている大切な事であった。


精霊達は本来一つの事しか出来ない、例えば火を産む、水を産むといったものだ。


その程度扱うだけなのなら精霊遣いは精霊遣いとして恐れられる職業の筈が無い。


其処から精霊をどう使うかという事が重要であった。


精霊をただ使うだけでは無く、何か大きな事を成そうとする時には手順が必要になる、例えて言うなれば卵焼きがあるとしよう。


卵を割りボウルに入れてかき混ぜる、この時に塩、砂糖といった調味料や出汁はたまた野菜などを投入した後にフライパンで何回かに分けて焼いて層を作っていく料理ではある。


しかしもし、卵を割りかき混ぜると直ぐ何回かに分けてフライパンで焼いていき層を作った後で上に塩や砂糖、野菜等を添えていたらどう思うだろう。



そう!、そういう事だった。


『くっ!...早くしなければ数々の精霊達の鮮度が落ちてしまうっ。』


精霊達の命を無駄にしてはならないと肉太郎は最後の精霊を呼び起こす。


『油の精霊よこの鍋をベタベタにしたまえ』


肉太郎の言葉を精霊達が聞くと直ぐに鍋がテカっていた。


『堕ちろぉぉおおおっ!!』


肉太郎の言葉に続く様に宙に浮いていた食材達が光の速さで落ちてくる。


しかしその程度の衝撃で鍋は壊れなかった。


さあ此処で漸く肉太郎は精霊調律に入ろうと思っていたのだが更に重要な事を忘れていた。


『ちくしょぉおおっ!!火がない!!!俺は此処までなのかよ!!!』


そう火が無かったのだ


嘆き悲しみながらも肉太郎は鮮度が落ちていく元精霊達を見送る事しか出来なかった。


しかし、一人だけ諦めてないものがいた。


『肉太郎…私を使いなさい。仮にも炎を扱う貴方の持ち霊なのです、早く。』


嫉女の言葉を聞いた肉太郎は希望を一瞬だけ持つが直ぐに目を伏せる。


『…駄目だよ、其れをした嫉女が』


『大丈夫ですよ、肉太郎。私は貴方の一部となるだけです。』


『違う、俺はお前が隣りにっ


『私は長く霊として生きすぎました、その気になれば精霊へと昇華も可能でしょう...そして私の特性は嫉妬の炎。 もうおわかりですよね?』


それだけ言うと嫉女の身体が光り輝く。


肉太郎にはその光景の意味がよく分かっている為に必死に止めようとする。


『待ってくれ!!大切な..本当に大切なお前がいなくなってしまえば...俺は俺じゃ無くなっちまう!!』


肉太郎の言葉を聞いた嫉女は嬉しそうに瞳を潤ませて、体を青い炎に変えていった。


『..ありがとうございます、貴方と会えて私は本当に嬉しかったです。』


『やめ..


『大丈夫ですよ、これはお別れじゃない..また会えますからね、きっと..肉太郎大好


最後の言葉を告げる前に完全に炎と化した嫉女を見て肉太郎は泣き叫びながら調律を始めた。


『うおおおおおっっ!!全ての精霊達よ燃えあがれぇぇぇぇえええっっ!!!』


中華料理とは火を使う場面に入れば後は時間勝負になる。


その事を知っていた肉太郎は手を止めずに炒め続けた。


『うおおおおっ!!』


30分40分50分一時間炒め続けていると、遂に炎が完全に消えてしまう。


完成した焼き飯を憔悴した様子で呆然と見ながらも肉太郎は食べようとする。


手を合わせて、呟く。


『精霊達よ...頂きます。』


レンゲやスプーン、等といった小洒落た物は一切使わず肉太郎は素手で掴み食し始めた。


一口、二口、三口、止まらない..止める事が出来なかった。


しかし、六口目で遂に限界を迎える。


『……………不味いっ、もう無理。』


鮮度が悪かったのか具材其の物も粗悪品の様に変な匂いがする。


そして忘れていたが、調味料を使ってなかった。




しかし元となる元凶はそんな所からでは無かった。


あれ程の時間をかけて炒めていたというのに純粋に冷たかった。


生温いなんてものでは無かった。


『良く考えればあいつの炎って、熱くなかったよな。』


肉太郎は忘れていた、嫉女の炎は人間の精神を焼き切る為だけに使える物であった事を。


しかし、今更そんな事を言っても最早遅い。


肉太郎は必死に嫉女のおかげ?で作っれた焼き飯を食べ続けようと鍋に手を入れようとした時に誰かに掴まれた様な気がした。


その誰かは呟く


(そんな物食べても肉太郎の体を壊すだけです、止めなさい。)


肉太郎は思わず背後を振り向くが誰もいなかった。


しかしその誰かは確かに分かった。


『嫉女...ごめんな』


肉太郎の悲痛な謝罪の後、体力の限界を迎えて倒れた。


そんな直ぐ近くで消えた筈の嫉女は微笑みながら呟いた。


(此れで一緒ですね♪)

























『あっ、そう言えば旅の前に持って来ていたチョコバーがダース単位であったわ』


(ちょ、)


肉太郎は試練を捨てて、チョコバーを食べ始めるのであった。


あざした!!

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