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僕らの小規模戦争  作者: モリリンモンソン
第1章 お腹がすいたのなら農業をしなさいよ
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第7話

「その代わり、僕からも条件を付けさせてもらう。さっきの熊の値段を100万から200万に変更だ」

「200万?俺の一存ではわからんが、それはさすがに難しいかもしれんぞ。隊長との交渉次第としか言えないが」

「それに関しては問題ない。彼には僕が話をつけよう。この僕を使わせたんだ、それ相応の誠意ってものを見せてもらわないと割に合わん。トラウゴットにとっても悪いようにはしないから安心したまえよ」

ヴィクトアを抱きしめながらドヤ顔で答える。まったく、こんな純粋無垢で一まさに天使と言っても過言ではないヴィクトアを利用するなんて本来なら許し難いことだが、全ての怒りはテオに精算してもらおう。とはいえあと3日後までに準備しないといけない、気は進まないが契約したからにはしっかり完遂させねばなるまい。

「それではミア、早速村に戻るぞ。仕事は迅速、確実、丁寧に、だ。ハルトムート、タップを外で待機させておいてくれ。荷台はいらんから、タップに鞍をつけておくように。さあヴィクトア、君もそろそろ帰る時間だよ。今日も仕込みの手伝いをするんだろう?」

そう言ってヴィクトアを解放した。ヴィクトアはさっきまでのことが嘘のように笑顔で、うんと返事をしてトラウゴットの元へ向かった。

「それじゃあロッテ。急ぎの頼みですまないが、よろしく頼む。ほら、ヴィクトアも挨拶しな」

「お姉ちゃん、またね!」

僕にとっての天使が帰るのを見送る。さあてこんなめんどくさい仕事、今日明日には終らせてやるぞ。

「貴女、本当にあの子に弱いのね」

まるで知っていたかのような口ぶりじゃないか。僕はミアにヴィクトアの話などした記憶は無い。となると、ハルトムートか。愉快そうにクスクスと笑う彼女に、少しばかり腹が立つ。と同時に、準備を終えたハルトムートがやってきた。

「ハルトムート。帰ってきたら少し話がある、覚悟しておけ」

「お、俺、なにかしましたっけ?」

ふん、知ったことか。オドオドとする彼を無視し、僕は店を出た。太陽は丁度てっぺんに差し掛かったぐらいか。ミアと一緒にタップに跨り、また村へ向かい始めた。

「今から直行すれば、今日中には狩れるな」

「何言ってるの。流石に今から帰っても着くのは日暮れ前くらいでしょう、夜の山は私達でも入らないわ」

「そこら辺の馬とタップを一緒にしないでもらいたいね。彼が本気を出せば、村までなんてあっという間さ」


ルンフェンから少し離れた所までやって来ると、辺りに人がいないかを確認した。うむ、人の気配は無さそうだ。

「君にタップの本気を見せてあげよう。振り落とされないように、しっかり掴まっておきたまえ」

「あら、私だってそれなりの馬には乗ってきたのよ?問題ないわ」

そうかい。と返事をして、タップの頭を撫でる。タップはそれに反応するように身震いさせると、次の瞬間、その身体から大きな翼が現れた。

「翼!?ロッテ、この子ってもしかして」

「そう、タップは天馬だよ。さあ行くぞ!舌を噛まないように気をつけてね!」

手綱を引くと、タップは勢いよく空を駆け始めた。

「い、いやああああ!!」

ミアは僕に全力でしがみついた。僕は知っている、彼女が高所恐怖症だということを。

「どうだいミア、なかなかこんな体験できる者はいないよ!ぐううう!?」

僕の声はまるで聞こえていなかったが、恐怖のあまり今まで以上の力が加わり、僕のお腹を全力で圧迫してくる。吐きそう。

「ミア、やめ、出ちゃうから、吐いちゃうから」

「もう下ろしてえええ!!」

ミアの絶叫によって僕の言葉は掻き消された。そのまま約1時間、僕とミアは苦痛に耐えながら空の旅を満喫した。無事村に到着すると、ミアは真っ青な顔をしたまま地面を見つめ、僕はタップの小屋の裏で胃の中のものを全て吐き出した。

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