白浜凛side その2 浮気者?
テストまで後2週間に迫った金曜日、私はいつものように1人で登校して本を読んでました。今はまだ勇気がないけどいつか彼氏さんの桜木君と一緒に登校したいな……
なんて考えてたらその桜木君が登校してきました。早くお昼にならないかなぁ、今日の卵焼きは自身があるから桜木君もきっと喜んでくれるはず!
そんな私の楽観的な考えはあっという間に無くなりました、桜木君に話しかける女子がいたからです。
「ねえ瞬、今日の昼休みに大事な話しがあるから中庭に来てくれる?」
話しかけたのは天野雪さん、すっごくスタイルが良くて可愛くてみんなの憧れの的みたいな人です。そんな人が桜木君に大事な話?しかも今下の名前の瞬って呼んでましたよね?桜木君の彼女の私ですらまだ名前で呼べたことないのに。
彼女はいったい桜木君とどういう関係なんでしょう?すごくすごく不安です。
クラスのみんなも騒ぎ出して、その時桜木君がこっちに気付いて見ました。するとすぐに桜木君からlineが
「天野は家が近いだけのただの幼馴染だから何もないよ」
……幼馴染、あんなにすごい人が桜木君の幼馴染なんですか!?
確かに天野さんも他の人に幼馴染だって説明してるから嘘じゃないみたいですけど……でも嫌な予感がします、これが女の勘ってやつでしょうか。
それでも私は桜木君の彼女です、幼馴染さんなんかに負けたりしません!
私は桜木君のこと信じてますよ。
そして始まった昼休み、結局午前中の授業なんか耳に入りませんでした。
中庭の様子を見に行くとすでに大勢の見物人がいました。どうも天野さんの友達が朝の話を学校中に広め、みんなの憧れの天野さんが男子を自分から呼び出したという噂は瞬く間に学校中を駆け回り上級生の方も来ているようです。
……一応ですがここに集まった方はみんな天野さん目当てですよね?私の彼氏さん目当てに来てる人はいませんよね、そうですよね?
前で中庭を覗いてる人達が急に騒ぎ出しました、どうやら桜木君と天野さんが現れたようです。……私は身長が低いので見えません。その時天野さんの声が聞こえました
「小さいころからあなたのことが好きでした、私と付き合ってください!」
!!!
やっぱり嫌な予感は的中しました。でも、でも大丈夫です。桜木君は絶対断ってくれる、はずです!
周りの人が大騒ぎしてます、どうなったんですか!?どうなったんですか!?
うーん、背伸びすればギリギリ見えそうです。なんか2人で話してるようですが声が小さくてこっちまで聞こえません。
「おいどーした?2人だけでボソボソ喋るなよ。」
「桜木君どーするのー?」
周りの人達がはやし立てます、そうですこっちにも聞こえるように話してください。
あ……今桜木君と目が合いました、信じてますよ!
しかし聞こえた返事は予想外のものでした
「はい……喜んで。」
へ………?
い、今桜木君はなんて返事をしたんですか?
「もう付き合ってる人がいるから付き合えません」ですか?
「悪いけど他に好きな人がいるからごめんなさい」ですか?
それとも……それとも……
必死に自分の記憶を変えようとする私でしたがそんなの結局無理でした。
だって聞こえてくる
「キャー!カップルの誕生よ!」 はやし立てる黄色い声
「あの野郎天野さんと付き合えるなんてどんなやつなんだ!?」目当ての人を取られた怒号まじりの声
やめて……やめて………
見れば天野さんが桜木君に抱きついていました。
やめて……やめて!それは私だけの、桜木君の彼女だけの!
そこで私は気付きました、桜木君はたった今天野さんの告白を受け入れたんです。つまり天野さんは桜木君の彼女で桜木君は天野さんの彼氏です。
じゃあ私は……私はいったい桜木君のナニ?
気がついたらその場を走り去ってました。もうここにはいられない、そんなことを本能的に感じたのでしょうか。
気分が最悪な私は担任の先生に具合が悪いと伝えて早退しました。私の顔色が余程悪かったのか1人で帰れるか聞かれましたが今は1人にして欲しかったので断りいつも道理電車で一時間半かけて帰りました。
母はこんな時間に帰ってきた私を見て驚いていましたが気分が悪いと言うと色々と心配してくれました、気を使わせてごめんなさい。
「はー」
部屋のベットに座った私は思わずため息をつきました。今日程ショックを受けたのはいつ以来でしょう、桜木君は私に笑顔を取り戻してくれましたが今度は奪っていくのでしょうか。
携帯を見ると桜木君からlineのメッセージが来てました。
「2人で会ってちゃんと説明したい」
……今さらなんの説明があるというのでしょう、私も告白を受け入れたのをその場で見てたんですよ?
桜木君は美人の、……私より美人の天野さんから告白をされてそれを受け入れた、それだけです。
これって浮気に入るのでしょうか?いいえもっとひどいはずです、彼女がいるのに他の女子の告白を受け入れる人なんて最低です。
やっぱり……男の人なんてみんな浮気者で最低です。中学の時の相手も他に何人も彼女がいました。そして桜木君も……私より美人の人から告白されたらあっさり乗り換えました。私だけを見てくれる人なんていないんだ、みんなついでの彼女が欲しいから簡単に騙される私を狙っただけなんです。
桜木君のメッセージには何も返さず携帯を机に置きました。そうだ、もうあんな浮気者なんかと話すもんか。男の人となんか最初から話したりしないで声かけられても断っていれば……
「一緒に話しをしないかい?」
っ!
あれも嘘だったんでしょう、1人ぼっちの私を狙った入念な計画です。
「も、もちろん良かったらだけど。」
あれで断れないように念を押してたんですね、そうに決まっています。
「本当は1人でいるのが寂しかったから一緒に話しをしてくれる人が欲しかったんだ」
………嘘です、本当の本当は私を騙そうとして話しかけたんです。
「ごめんね、やっぱり迷惑だったよね?」
そうです!迷惑だったんです。……期待なんか持たせないでください。
「どうか俺と付き合ってもらえませんか!?」
うっ、っく、あれも、ひぐっ、嘘だったんです。
なんで涙が止まらないんですか、あんな浮気男と別れてせいせいするはずで……
携帯を置いた机の上に置いてある本、それは桜木君に借りた本でした、今日の昼休みはこの本の話をするつもりだったんです。
私と桜木君の3ヶ月の繋がりの証拠であるその本を見つけてしまった私はもう気持ちが溢れるのを止められませんでした。
「桜木君……会いたいよ。」
一度置いた携帯をとって桜木君に連絡しました。
「場所を教えるので明日私の家に来てください」