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幼馴染と付き合うなんてあり得ないと思っていたころが確かに僕にもありました

 

 「……は?」


 今こいつは何を言った?泥棒猫ってなんのことだ?


 「そうよ泥棒猫。それが瞬になんか吹き込んだんでしょ?私と勉強するなとか。」

 「ちょっと待てよ、泥棒猫ってなんのことだよ?」

 「だから瞬をたぶらかしてるあいつよ。ちょっと顔が良い程度で瞬の隣にいようなんて本当に身の程知らず。」


 ……もしかして白浜さんのことか?っていうかなんで雪が白浜さんのこと知ってるんだ?それに泥棒猫って……

なんかマズいぞ、雪の中で白浜さんはどういう位置付けなんだ?


 「白浜さんのことか?なんでそんな風に言うかわからないけど彼女は泥棒猫なんかじゃないぞ。

俺は彼女と正式に付き合っているんだ。」


 とりあえずよくわからない誤解は解いとかないと、そう思って言ったが雪は気に食わないとでも言うようにこっちを睨んでいる。


 「ねえ瞬、この間も言ったよね?瞬は騙されてるのよ。どうしてわかってくれないの?」

 「だから騙されてなんかないって。彼女はすごく優しい良い子なんだって、雪も話してみればわかるよ。」

 「泥棒猫なんかと話しはしないわ。瞬にお弁当なんか作って下心が見え見えなのよ。」


 え、なんで弁当のこと知ってるんだ?


 「あらなんで知ってるのか不思議そうな顔してるわね?

他にもいろいろ知ってるわよ?図書室で泥棒猫が瞬に泣きながら抱きついたり手を繋ぎながら帰ってたこととか。」


 !?

 見てたのか!?あの時間には部活(雪は陸上部)をやってたはずじゃ?


 「自分を抑えるのが大変だったわ。他のどうでもいい男子ならともかくよりにもよって私の瞬に手を出すなんて………正直殺しちゃおうかとも思ったけど瞬がいたからやめたの。」


 頭が混乱する、さっきから雪がなにを言ってるかよくわからない。「私の瞬」ってどういうことだ?


 「それなのに調子に乗って私との勉強の時間も無くそうとするなんて……やっぱり許せないわね。」

 「雪、お前なんでそんなに白浜さんのことを嫌ってるんだ?」


  混乱してる中、どうか違って欲しいと思いながら1つ質問をした。


 「……?そんなの決まってるじゃない。

私の大好きな瞬に手を出した泥棒猫だからよ。」




 

「嘘だろ………」


雪が俺のことを好き?

そんな訳ないと思った質問が的中した。


 「嘘じゃないわ。瞬は昔から私の憧れの人。他の男なんて私にとってなんの意味も持たないわ。私はずっと昔から瞬だけのものなの。」

 「……そんなっ、そんな訳ない!」


 恍惚とした目で見てくる雪に言い返す。


 「雪は昔から俺にキツいこと言ってきただろ!」

 「昔から瞬にだけは本当の私を出せた。でもあれは照れ隠しなだけ。確かに瞬にはひどいこと言ったけど全部恥ずかしかったの。」


 ちょっと悲しそうな顔をして言う雪。そんな、そんな訳……


 「今まで俺のことをブサイクだのモテないだの言っただろ!」

 「瞬が他の女に騙されたり声をかけたりしないようによ。でもそれも意味が無かったわね。」


 そう言ってゆっくり近づいてくる雪。


 「ねえもう瞬が他の女と一緒にいるなんて我慢出来ないの。ねえ瞬、あんな泥棒猫とは別れて私と一緒になろう?」


 後ずさるがだんだん部屋の隅に追い詰められる。


 「今までひどいことしてごめんね。でももう自分に素直になるから、瞬の言うことだってなんだって聞くから、ね?

それとも私じゃ不満?」


 雪はすごくかわいいしスタイルもよくモデルにならないかと何度か勧誘されたことだってある。外見が不満かと言ったらそんなことは有り得ない。

 俺だって雪のことが好きだった時期もあった。でも雪はその頃からモテてたし俺にはキツかったから高嶺の花だととっくの昔に諦めていたのだ。それが今になってこんなことになるなんて……


 でもやっぱり俺にはもう彼女がいる。白浜さんと別れて雪と付き合うなんて考えられない。


 「雪、お前の気持ちはわかったけどやっぱり白浜さんと別れるなんて考えられない。ごめん。」


 ちゃんとはっきり断ったつもりだった、しかし雪はわかってくれなかったみたいだ。


 「あの泥棒猫のどこがいいの?体で誘惑されたとか?」


 驚いたことにそう言いながら雪は服を脱ぎ始めた。逃げ出そうとしたがいつの間にか隅に追いやられ逃げ出せなくなっていた。


 「瞬の言うことなんだって聞くって言ったの嘘じゃないよ?

瞬にだったらいくら見られても触られても平気、ううん、触って欲しい。」


 下着姿の雪が迫ってくるが動けない、こいつ服の上からでもわかってたけどやっぱりすごく胸が……


 「あんな幼児体型より私の体の方がいいよね?男の子だもん、いっぱい触っていいよ?」


 ヤバい、このままだと理性が持たない!

そう思った時俺の携帯が勢いよく鳴った。反射的にでると


 「あんた今何時だと思ってるの!?遅くなるなら連絡ぐらいしなさい!」


 母親からの怒りの電話だった。慌てて、もう家に着くとこだからと謝って電話を切った。

 危ない、電話がなければ雪に手を出してしまうとこだった。

雪の方を見ると不満顔で「おばさまも間が悪いわね。」なんて言いながら服を着始めた、どうやら助かったようだ。


急いで帰ったが帰り際に雪が


 「今日はもうしょうがないけど明日から楽しみにしててね。」


と言っていたのが気になる。




 次の日学校に登校すると雪が女子とのお喋りをやめて近づいてきて言った。


 「ねぇ瞬、今日の昼休みに大事な話しがあるから中庭にきてくれる?」


高校のクラスで雪に話しかけられたのは初めてだったので驚いたが、それはクラスのやつらみんなもそうだったようだ。


 「えー?天野さんって桜木君と知り合いだったの?っていうか名前呼びって相当親しい関係?」

 「おい、あいつ天野さんに話しかけられてるぞ。」

 「なんであんな目立たないやつが…、話しってなんだ?」


 クラス内がざわついてる、雪は楽しそうに女友達に幼なじみで~なんて説明している。

なんか大事になってきたな、なんて考えてると強い視線を感じた。そちらを見てみると……


 白浜さんが不安そうな目でこちらを見ていた。


マズい、白浜さんは俺と雪の関係を知らない。なんか誤解されてる気がする。

慌てて白浜さんにただの幼なじみだということをlineで伝えたら


 「私桜木君のこと信じてるから」


 と返ってきた。なんかあんまり納得してそうにないな……



 昼休みになり約束通り中庭に行くと周りに人だかりが出来てた。中庭はわりと校舎のどこからでも見えるようになっているため雪のファンの男子や興味本位の女子が今朝の話しを聞いて見に集まったのだろう。大勢の人に注目されていて落ち着かない。


 雪も来て俺の前に立った。周りが騒ぎだす。


 「桜木瞬君」


雪が周りにも聞こえる大きな声を出した。


 「小さいころからあなたのことが好きでした、私と付き合ってください!」


女子がキャーキャー言い男子がそんな…と声を出してるのが聞こえた。

でも俺の気持ちは変わらない。雪に恥をかかせないよう周りに聞こえないよう小さい声で言う


 「雪、何度言われようが俺の彼女は白浜さんだけなんだ。だからこんなことやめてくれ。」


すると雪も小さな声で言い返してきた


 「今私の告白を断ると……」









「私の友達が彼女をいじめるようになるわよ。」


 ……は?


 「私の友達は友達想いだからね~、あんな暗い子のせいで私が振られて恥かいたら彼女に仕返しぐらいはしてくれる。っていうかするように仕向ける。

あの子友達いないみたいだからこれから辛いわよ~。」


なっ!


 「白浜さんに手を出すな!」

 「大きい声ださないで、同じことになるわよ?」


こいつなんてことを……


 「そうなるのが嫌だったら今どうすればいいのかわかるわよね?」


雪がにんまり笑って言う、嫌な笑みだ。


 「おいどーした?2人だけでボソボソ喋るなよ。」

 「桜木君どーするのー?」


 周りが騒ぎ出す。


 「ほら早く!」


雪もせかしてくる。俺は…………

視界の端に白浜さんが写った、人が多くて見えづらいのか小さな身長で必死に背伸びしてこっちを見ている。そうだ……彼女に辛い思いをさせる訳にはいかない。ごめん白浜さん、後で絶対説明するから。




 「はい……喜んで。」


 これは演技だと自分に言い聞かせながら言ったがそれでもすごく辛かった。

 周りがすごく騒ぎ出した、白浜さんが「うそ!」とでも言いたげな顔になった。

雪が狙ったのはこれだったんだ。学校で俺の彼女は雪ということを知らしめることで白浜さんが付け入る隙を無くし、俺の正式な彼女へと成り代わる。




 「瞬!」


 雪が抱きついてきて周りがさらに盛り上がった。


 「明日からお弁当も全部私が作ってきてあげるから。図書室なんか行かせないわよ。」


雪が耳元で囁いてくる。俺はそれをぼんやり聞きながら、走り去っていく白浜さんを見ていた。



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