自分に青春なんて無いと思っていた頃が確かに僕にもありました
白浜さんに告白してから俺の日常は一変した。
教室内では相変わらず話さないが昼ご飯は一緒に外のベンチで食べるようになったし図書室にわざわざ行かなくてもいっぱい話した。そんなに話すネタが無くても2人で一緒に座ってるだけで幸せだったし、白浜さんもそう思ってくれてるみたいで、そんな時は黙って俺の肩にもたれかかってくる。
そうそう、白浜さんはやっぱり好きな人には甘えてくるタイプだったみたいで、誰もいないとこでは抱きついてきたり甘える言葉をだしてきた。
それでも根はしっかりしてるせいか尽くしてくれる面もあり、最近は俺のために弁当を作って来てくれる。いつもコンビニのパンで昼を済ませていた俺にはすごくありがたかったがさすがに悪いと一度断りかけたんだが
「お弁当美味しくなかった……? 」
なんてことを若干涙目で言われて、もう作んなくていいなんて言えなかった。
いやお弁当すごく美味しいけどね。
最近俺はある問題を抱えている。今は7月なので学期末のテストが近いのだ。俺の高校生になってからの成績は悪く、天野雪に教えてもらってなんとか持ちこたえてるが彼女が出来たのにも関わらず他の女子と一緒に勉強をするなんてのはどうだろう?
そんな風に悩んでたら白浜さんから一緒に勉強しないかとお誘いがあった。ありがたい、やっぱり彼女がいるなら彼女とやるべきだよな。放課後に学校近くの図書館で勉強する約束をしてから天野雪にlineした
「今回のテストは教えて貰わなくても大丈夫だよ」
これでよし。あいつはなまじ天才なので俺に勉強教える時も色々準備してくれてるからな、早めに必要ないって連絡しないと。
放課後に白浜さんと図書館で結局8時くらいまで勉強したが全然勉強わからなかった……、白浜さんは天野雪みたいな天才ではなかったがすごく成績が良いらしい。なんでもいつも1人でいてやることが他になかったからとのこと、いつも一人でゲームしてた俺とは大違いだ。
白浜さんと駅まで一緒に行って別の電車に乗ってから何気なく携帯を見ると雪から随分前にlineが来ていた、ヤバい、見てなかった。
けど……もっとヤバいのはその内容だった。
「なんだよ……これ。」
思わず呟いた。
「なんで?私が教えないと出来ないの自分でもわかってるよね?」
「強がらないで、私が教えてあげるから」
「別に迷惑なんて思ってないから気にしないで」
「学校終わったらまた私の家来て」
「まだ?」
「なんで来ないの?」
「ねえ携帯見てよ」
「迎えに行ってあげる、今どこにいるの?」
「なんで反応ないの?」
「もしかして誰かと一緒にいる?」
「早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て早く来て」
今までこんなlineが天野雪から来たことは無かった。明らかに変だ、異常だ。
そう思った時またlineが来た、そうだ今既読が付いたから……
「やっと見てくれたね、すぐに私の家に来て」
正直今日あいつの家に行くのはなんかマズい気がした。でもこっちがlineに気付いてなかったためあいつはずっと俺を待ち続けることになったのだから断りづらい、結局、今電車乗ってるからあと1時間くらいかかるけどそれでもいいなら行く。と伝えたらすぐに、「待ってる」と来た。気が進まないなぁ……でもなにか余程の用事があるんだろうか?
天野家に着きインターホンを押すとすぐに雪が出てきた。
「待ってたよ、さ、私の部屋に来て。」
見た感じ普段と同じ様子だがさっきのlineはいったい……?頭の中はそのことでいっぱいだったがとりあえず雪に着いて行き部屋にお邪魔した。
部屋に入ると雪がこっちを振り向き言った
「それじゃ勉強始めようか。」
…は?
「いやもう10時過ぎだぞ?急ぎの用じゃなければ家帰って飯食って寝たいんだけど?」
「急ぎの用事だよ?瞬の頭じゃ今の内にテスト勉強しないとまずいわよ。いつも、いっっつも私が教えてギリギリなんとかなってるんだから。」
こいつマジで言ってるのか?確かにこいつにはよく勉強を教えてもらってるがせいぜいが8時まで、こんな時間に始めたことなんてないぞ?
「なにやってるの?早く教科書だして。」
「いや、だから今回のテストはお前に教わらなくても大丈夫なんだって。」
「なに言ってるの、中学では塾行ってなんとかなったけど高校ではそうは行かないわよ?どうせ意思が弱い瞬じゃ自分1人でまともな勉強なんて出来ないのよ。受験に受かったのが奇跡みたいなもんなんだから。」
ずいぶんな言われようだ。確かに俺は意思が弱くて1人で勉強に集中できた試しがない。だが!今回は俺だって全く勝算が無いわけではない。
白浜さんと一緒に勉強してる時間は楽しかったし集中できた。さすがに今日すぐには全然わからなかったがこの調子で勉強してればテストにはなんとか間に合いそうだ。
「べつに俺だって1人で勉強するわけじゃ「それとも」 」
途中で止められた。
「それとも瞬は私と勉強できないわけでもあるの?」
雪はこちらを見て笑いながら言った、でも笑ってない。
こちらを見つめて離そうとしない、そのきれいな目は全く少しも笑っていない。
なぜだろう、それだけははっきりとわかった。
「瞬は高校生になってから勉強は私に頼りきりだったよね?なんで急に教えてもらわなくてもいいなんて言うの?」
……こいつに白浜さんのことは言いたくなかった。告白を相談した時さんざんひどいことを言われたから付き合ったことを話すのに抵抗があったのだ。しかしこの調子ではもう隠し通すことも出来ないだろう、正直に話してもう勉強を教えてもらう必要がないと分かってもらおう。
「実は俺「あー、わかった!」 」
また途中で遮られた。
「だれかに余計なことを言われたんでしょ?瞬が自分でそんなこと考えるわけないもんね。
たとえばそう―――」
「あの泥棒猫とかに」
……雪はとても楽しそうに言った、でもやっぱりさっきと同じ、その目は………少しも笑っていなかった。