白浜凛side その1
私、白浜凛は幼いころから内気な性格でした。
友達と遊ぶより1人で本を読んでる方が好き、他の人と一緒に作業とかすると疲れてしまう、そんな子だと自分でも自覚してました。
中学3年生の時のことです。私は1人の男子に告白されました。そんなこと今まで恋愛小説とかでしか見たこと無かったしまさか自分が体験するとは思ってもいなかったのですがそれはとても素敵なことに思えてその場で了承しました。
実はその男子とは全然話したことは無かったのですが、女子のグループみたいなものに入ってなかった私にも噂が聞こえるくらい女子の間で人気がある人でした。
私はそれに惹かれたわけではなく彼氏ができると言うことに憧れていたため告白を受け入れたのですがそれが間違いでした。
付き合ってからわかったのですが彼は噂のように良い人では無かったのです。
私以外に他にも付き合ってる女子がいました。
他の人が見てないところでいじめもしているようでした。
女子の…その…エッチな写真を撮って脅して言うことを聞かせている時もありました。
私も家に呼ばれて服を脱ぐように言われましたが断ると殴られました。
「ちょっと顔がイケてるから声かけてやったのに生意気なこと言ってんじゃねえよ。お前は黙って俺の言うこと聞いてればいいんだよ!」
そんなことを言われて怖くなった私はスキを見て逃げ出しました。怖くて怖くて家から出られずにいて気分が悪いと両親に言いその週は学校を休みました。
しかしいつまでも両親を心配させる訳にもいかず、次の月曜日は学校に行きました。しかし私が学校に行ってみると……
学校のロッカーに入れてた教科書が破かれ落書きもされてました。
呆然としてると女子が話してる声が聞こえました。聞いた話しをまとめるとどうやら私はいじめのターゲットにされたようです。しかもその理由は彼の他に何股もかけてた、その……ビッチ?な女だからというものでした。
どうやら私が学校にいない間に彼が私の悪い噂を広めたようです。
もともと内気で友達も少なかった私はそれから誰にも無視されるようになりました。それでも両親には心配かけたく無かったので受験まで耐え続け同じ中学からは誰も行かないような離れた高校に合格し、逃げるように中学を卒業したのでした。
高校に入学しても友達は出来ませんでした、いいえもしかしたら友達になってくれる人がいたのかもしれませんが、中学で人間不信になってしまった私は人と関わるのを自分から避けていました。
誰も話す人がいない、昼休みも1人で外のベンチで食べたら図書室で本を読んで過ごし放課後もまっすぐ帰る、そんな生活リズムができてそれはずっと繰り返されるはずでした。そんな私に話しかけてくれる男の子が居なければ……
「こんにちは、同じクラスの白浜さんだよね?その本俺も読んだことあるよ。1人で本読んでるのに飽きちゃったから一緒に話しをしないかい?」
ある日いつものように図書室の隅で1人で本を読んでいたら急に声をかけられました。あんまり突然のことだったので驚いて本を落としそうになってたら相手の男子もその反応に慌てたのか
「も、もちろん良かったらだけど。」
と続けました。正直言って男子に話しかけられるのはすごく怖かったけれとど上手く断る方法が見つからず結局お話するようになってしまいました。
ビクビクしながら話しをしましたがその男子は本当に本の話しをしただけでそのまま昼休みが終わりました。
それ以降その男子は毎日昼休みには図書室で話しかけてきました。同じクラスなので私と同じで他に話す人がいないんだろうなぁというのはなんとなく察しましたが、だからと言って私に構うこともないのに……、最初はそう思っていて正直話しかけて欲しくなかったです。
断ることが出来なかったから話しをしてるけどつまんないです~と顔にも出しましたしなるべく仏頂面で目も合わせないようにしてました。
それでも…それでもその男子は私にずっと話しかけ続けました。毎日毎日、私の態度が悪いなんて気づいているはずなのに飽きもせず面倒くさい私に話しかけてくれました。
ある時ふと思いました、なんでこの人はこんな私に話しかけるのでしょう。友達もいなくて両親以外と会話することもな1人ぼっちの私なんかに。
以前に言われたことがあります
「ちょっと顔がイケてる」
自分でそういうふうに考えたことは無かったけどあの男子もそれで声かけてくれるのでしょうか?
私がイケて無かったら声をかけてくれなかったのでしょうか?
気になった私は直接聞いてみました。
「ねえ、なんであなたは私に話しかけたの?」
急な質問に驚いた様子でしたがその男子はうーん、と少し考えて恥ずかしそうに答えました。
「本当は1人でいるのが寂しかったから一緒に話しをしてくれる人が欲しかったんだ、それで同じクラスの白浜さんをよく図書室で見かけたから思わず声かけちゃって……ごめんね、やっぱり迷惑だったよね?」
違った、この人は顔で私を選んだんじゃなかったんだ。この人はきっと同じクラスで1人で本を読んでたら私じゃなくても誰でも声をかけたんだ。
たまたま私がその存在だっただけで、たまたまこの関係が毎日続いただけで。
それを知った途端寂しくもなった。もし私以外の人に話しかけてたら私はずっと1人ぼっちのままだったろう。
友達なんて中学の頃からいなかったから寂しくないと思っていた。でも今は1人ぼっちの昼休みなんて想像できない。
「本当は1人でいるのが寂しかった」
この人はそう言った。そうだ、今やっと気づいた。
本当は私もずっと寂しかったんだー……!
「えっと、白浜さん?」
私がずっと黙っていたからか前に座ってる男子、「桜木君」が困ったような顔でこっちを見ています。
だから私は
「ううん、全然迷惑なんかじゃないよ。」
笑顔で桜木君に言いました。笑顔なんて本当にひさしぶりです。
私に声をかけてくれてありがとう桜木君
その日から私は桜木君への態度を改めました。お話も少しは自分からするようになり、お互いにお勧めの本を貸しあったりして昼休みがとても楽しみになりました。
桜木君はとてもやさしくてそれからも話しかけ続けてくれて私も自分でもびっくりする程笑えるようにようになりました。(相変わらず教室では恥ずかしくて桜木君とは話せてませんが。)
そしてその頃から私は桜木君のただの友達のままで居たくはないと思うようになっていました。中学生の頃とは違う気持ち、誰かを本気で好きになるということが初めてわかった気がします。
でも桜木君が私に話かけた理由は誰でもいいから話をしたかったから。私自身が特別だったからではありません。なので桜木君の中では私はただの「話ができる友達」程度なのでしょう。それが悔しくて、悲しくて、ちょっと胸が苦しいんです。
それから2ヶ月程経ちました。
相変わらず昼休みは桜木君とお話をしているのですが今日はちょっと変でした。私はいつものように図書室の一番奥の机に座って桜木君が話しかけてくれるのを待っていましたが桜木君はちょっと離れた机に座ったままこっちを見て動こうとしません。
え!?今日はお話してくれないんですか!?
そんなふうに不安になって桜木君を見るとすぐにいつものようにこっちに来てくれました。
それから楽しくお話をしてそろそろ昼休みが終わるという時間になって教室に戻ろうとすると、桜木君から話したいことがあるから放課後図書室に来て欲しいと言われました。でも桜木君、今日は図書当番があるからもとから2人とも行かなきゃいけないんだよ?そう伝えると焦ったように図書室を出て行ってしまいました。あの焦りようは忘れてましたね、2人きりで仕事できるから私は毎回楽しみにしているのに……うー!
桜木君に呼び止められたので危うく授業に遅刻しそうでした。それにしても……桜木君はなんで私を呼び出そうとしたのでしょうか?あの焦りようを見る限り図書委員の仕事でもないようですしそうでもなければ桜木君がわざわざ私を呼び出す用事なんて………
「話したいことがある」
話したいことがあって呼び出す、桜木君が私を、……い、いやそんなことありえません。そんな私にとって都合が良すぎる話なんて。でも男子が女子を放課後呼び出すって……ご、ごめんなさい桜木君、期待だけならしてもいいですよね…?。
午後の授業中私は桜木君の話のことばかり考えていました。
放課後の図書当番の仕事はほとんどやることがありません、そもそも放課後の図書室を利用する人自体が部活に力を入れてるこの高校では珍しいからです。なので桜木君の話はいつしてくれるのかずっと緊張していましたが一向に持ち出してくれません。我慢できなくなって思い切って私から聞いてみました
「ねえ桜木君、その…昼休みに行ってた話したいことってなんだったの?」
ついに言ってしまいました!さらに私は気持ちが抑えられなくなり期待してたことなどを真っ赤になりながら言ってしまいました、うう……これで絶対私の気持ちばれちゃったよ~。
なんて思ってると桜木君に名前を呼ばれ、急だったのてびっくりしてると
「どうか俺と付き合ってもらえませんか!?」
……え?、うそ……本当に?夢じゃなくて?
桜木君のことをずっと好きだった私願いが…叶った…
やっと理解できた私は気がついたら桜木君に泣きながら思いっきり抱きついていました。
なります、絶対桜木君の彼女になります!
私の勢いに桜木君も困惑しているようでしたが、私が泣いてるのは嬉し泣きだとわかるとひとまず落ち着いたようでした。
しがみついてる理由も聞かれましたが…大好きな彼氏さんに抱きつくのは彼女として当然の権利です!桜木君が嫌ならやめるつもりでしたが全然嫌じゃないと言ってくれて頭までなでてくれました、はうっ!幸せです。
ずっとそうして欲しかったのですがもう図書室を閉める時間だからと桜木君に優しく引き剥がされてしまいました、うぅ、もっと甘えたかったです。
それでも帰り道は手をつないで一緒に帰りました。前の怖い彼とは結局手を繋ぐことも無かったので初めて男子と手をつないだことになります。すごく温かくてもっと甘えたくなってしまいましたが頑張って我慢して帰りました。