自分なんかに彼女は出来ないと思っていた頃が確かに僕にもありました
読んでくださる読者様にひたすら感謝です!
今日こそ白浜さんに告白する。そう決めていた俺は朝からすごく緊張していて午前中の授業なんて全く頭に入らなかった。
いよいよ昼休み、さっさと教室で飯を食べ終えた俺は図書室に向かった。(白浜さんはいつも昼は外で食べるのか教室で食べてるとこを見たことがない。)
俺が図書室に来たときはまだ白浜さんはきてなかったので適当な本をを読んで時間をつぶしていた(勿論緊張してたので内容なんか全然思い出せない。)ところ10分ぐらいして白浜さんが図書室に入ってきた。
いつも白浜さんは図書室の一番奥の机に1人で座って本を読んでる。最近は毎日一緒に話しをしているのだから最初から俺と同じ机に座ってくれればいいのに……なんて考えてたら嫌な言葉を思い出した
「どうせ昼休みに話すって言ってもあんたからなんでしょ?白浜さんの方はうざがってると思うわよ。仲良くなったと思ってるのもあんただけじゃないの?」
もしかしたら本当は天野の言うとおり白浜さんは俺のことをうざがってて、俺から話かけるから渋々話をしてくれてるのだろうか。
そんな嫌な考えが頭の中を回り出しいつものように声をかけることが出来ずにいると奥の席に座ってる白浜さんがこっちをちょっと見た。それで我に返った、そうだ、俺は天野に散々ひどいことを言われても白浜さんに告白するのはやめないと決めたんだ。つまり俺にとってそれだけ白浜さんは大きな存在だったんだ。
自分の気持ちを再確認してからはすぐに奥の机に移動して白浜さんに話しかけた。
「こんにちは、白浜さん。ちょっと話しできるかな?」
「こんにちは、桜木君。今日はどんなお話をしてくれるの?」
いつものように声をかけると白浜さんもいつものように笑顔で返してくれた。きっと俺が白浜さんのことを好きになった理由はこの笑顔が大きいんだろうな。
それから2人で座っていつものように最近読んだ本の話やちょっとおもしろかった話をしていたら昼休みが終わってしまう時間になってしまった。いつも先に白浜さんが教室に戻るので白浜さんが立ち上がったとき
「話したいことがあるから今日の放課後また図書室に来てくれる?」
思い切って声をかけた。ドキドキしながら白浜さんの反応をうかがうと、白浜さんはきょとんとした顔をしてこう言った
「えっと、今日の図書当番は私達のクラスだから桜木君も私も図書室には来なくちゃいけないんだよ?」
……そうだった!告白のことで頭がいっぱいになってて今日が図書当番の日だってことをすっかり忘れてた。今までは白浜さんと2人っきりになれる図書当番の日は凄く楽しみにしていたのに……。
うわ、なんか勇気だして声をかけたのが急に恥ずかしくなってきた。
「そうだったね!それじゃまた放課後よろしくね!」
恥ずかしくて急いで白浜さんより早く図書室を出た。白浜さんはポカンとしてたが追いつかれる前に急いで教室にもどる。その時やっぱり急いで俺と同じ教室に向かう人影を見たが…天野?
あいつは学校だと優等生ぶってるのでいつも授業が始まる5分前には完璧に授業の準備をして席に座ってる。なのでこんなギリギリの時間に教室に向かうなんて珍しいな。まあトイレにでも行ってたのだろう。
ちなみに白浜さんもなんとか授業には間に合ってた。
放課後になり図書委員の仕事の1つである図書当番を白浜さんと2人でしていた。図書当番は生徒が本を借りたり返却したいときその手続きをする仕事だ。
しかしうちの高校は部活動にわりと熱心な高校なので大多数の生徒はなにかしらの部活に入っている。そのため最後の授業である5限目が終わって一時間もすれば図書室には生徒はほぼ全くいなくなる。
(ちなみに俺も白川さんも部活をやってない少数派だ。)
さらに図書委員がやる仕事は複雑なものがない&急ぎの仕事になることも少ないので司書の人も5時を過ぎると図書室の鍵を委員の生徒に渡して帰ってしまう。
つまり午後6時現在図書室にいるのは俺と白浜さんの2人きりだ。これから図書室に来ようとする生徒もまずいないだろう。部活をやってない少数の人なんてもうとっくに帰ってしまうだろうし。
この告白には最高のチャンスと言ってもいい状況、しかしチキンで根暗な俺はなかなか言い出せずにいた。いっそ明日以降にしてもいい、そんな情けないことを考えているとついに白浜さんの方から声がかかった。
「ねえ桜木君、その…昼休みに言ってた話したいことってなんだったの?」
ヤバイ!そこに話を持っていかれたらどうしても告白の話をしなくてはならなくなる。もう言うしかないのか、今日でいいのか?頭の中がいっぱいになる。
「あのね、その…真剣な顔でいってたから大事な話なんだろうなぁと思って、どんな話なんだろうって授業中ずっと考えててね」
どうする?もう言い逃れは出来ない、素直に告白してしまえば楽になれるか?でももし本当は俺のことをうざがっているとしたら告白なんてされてもキモイだけだよな。
「その…私を呼び出すつもりだったみたいだから2人きりでなにか大事な話をするつもりだったのかな、なんて考えたりしてそれで絶対、絶対違うと思うけどあの…そういう話なのかなってちょっと期待なんかもしちゃって」
いや、俺は何度迷うんだ。白浜さんはそんな人じゃないのは俺自身がよく知ってる。告白は絶対する、もし失敗してぼっちに逆戻りしてもこのまま言わずに後悔するよりましなはずだ。
「そ、それで本当にそういう話だったら私すごく嬉しくて、絶対お受けするなんてこと考えてたんだけど…え、えへへそんなわけないよね。桜木君はすごく優しいから…そんな夢のような話を私が1人で期待なんかしちゃって……」
「白浜さん!」
「ふぇ!?は、はい!」
俺は今から告白する。これまでも、そしてこれから先も他の子にはしないと思う行為を。
それと俺が色々考えてる間に白浜さんがなんか話してたようだが考えに集中していて全く聞いてなかった。ごめん白浜さん、でも今回だけは先に告白させてください。
「白浜さんと図書室で毎日話しをしている内にどんどんあなたに魅かれ好きになりました。
どうか俺と付き合ってもらえませんか!?」
言った………ついに白浜さんに告白した。胸のつっかえが取れた気分だ。しかし肝心の白浜さんの反応は!?
「うそ……」
呆然とした様子で泣いていた。え!?俺からの告白は泣くほど気持ち悪かったのか!?
一瞬自分という存在が足元からガラガラ音をたてて崩れていくように感じるほどショックだった。これが失恋の痛みか…こんな思いをするならやっぱり告白なんてするんじゃなかった。
そんな風に絶望にうちひしがれていたら急に腹に強い衝撃を感じた。なにごとかと思って目線を下げたら白浜さんがその小さな体で思いっきり俺に抱きついてた。あれ?と思っていたらさらに白浜さんが泣きながらとんでもないことを言い出した。
「ひぐっ、お受けします!彼女にしてください!」
ええええええ!成功した!?俺の告白が?振られる場面ばかり想像してたからこの後どうすればいいかわからない。とりあえず俺に抱きついたまま泣き続けている白浜さんに素朴な疑問を聞いてみた。
「どうして泣いてるの?」
「うっ、ひぐっ、だって…本当に起こるなんて考えてなくて…期待だけしてたから…ぐすっ、嬉しくて…」
よく分からないがどうやらこれはうれし涙らしい、良かった嫌われてなくて。ついでにもう1つ質問。
「どうしてずっとしがみついてるの?」
「……彼氏さんだから…、嫌だったらやめる…」
なにこの子超かわいい、白浜さんは好きな人には甘えるタイプだったのか。
全然嫌じゃないよと声をかけてから、ついしがみついてる頭をなでたらすごく嬉しそうにしていた。
しかしふと時計をみたらもう図書室を閉めて職員室に鍵を返さなければいけない時間になっていた。俺も残念だったが渋る白浜さんを引き剥がして鍵を返しに行き、その後はカップルらしく手を繋いで2人で帰った。
その様子を1人の少女が見ていたなんて全く知らずに。