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天野雪side その1

一揆に全部投稿する気はありませんが、このペースで投稿していたらすぐにストックが無くなります(汗)

 

 私天野雪は幼なじみの桜井瞬が大好きだ。

いつ好きになったかとはあまり考えたことは無いけど多分、私がとても幼かった時からだろう。

 私は幼いころから他の人とは違っていると言われ続けた。最初はどういうことかわからなかったけどすぐわかった、私はあらゆる面で他人より優れていたのだ。

 幼稚園児の時には他の子と遊ぶのが馬鹿らしくて1人で本を読み、中学生レベルの勉強は全部理解した。たまに気まぐれで他の子と遊んでもすぐに飽きてしまう、みんな走るのも遅いし隠れるのもへた、幼いながらに自分はみんなと圧倒的に違うと理解した。

 そんな私はそのうち他の子と話す機会が減ってった。他の子の親が言い聞かせていたのだ。


「あの子はあなたとは違うのだから邪魔しちゃだめだよ。」


 そのころには私の才能を聞きつけた偉い人たちが様々な実験を私にやらせていた。そんな話を他の子の親も聞きつけなんとなく私を特別扱いすることにしたのだろう。学校の先生も私を特別視してどう接すればいいのかわからず困っていた。

 しかし私の両親は違った、最初は娘の才能を喜んでいたが私自身があまりこの才能を好きになれないと話すと一気に反応が変わった。私を特別扱いせず普通の娘として接してくれるようになったのだ。

 いわく、子どもはやはり子どもらしいのが一番とのこと。私で実験しようとする偉い人達を追い返して私のすきなことをすきなようにやりなさいと言ってくれた。本当に良い両親で私は心から2人に感謝している。

しかし周りの人の反応は変わらなかった。相変わらずの特別視、誰も自分から私と接してくれない。私には決して言わなかったが両親も近所からの目はつらかっただろう。


 そんな風に孤立している毎日を過ごしていた私が小学2年生の時の夏休み、お隣に新しく家ができ家族が引越して来た。

 今まで近所付き合いが無かった私の両親はうまくやっていけるか心配だったようだが、実際に挨拶をしてみるととても社交的な人で感じがよく、私の家の事情なども全く気にしなかったらしい。両親もうまくやってけそうだと大喜びだった。実際隣の桜木家とは現在も非常に仲が良く、休日はよく一緒に出かけたりバーベキューしたりする。

 その桜木家には私と同い年の男の子がいるから仲良くして欲しい、と言われたが正直私は同年代の子に友達などいなかったためあまり仲良くなれるとは思わなかった。どうしても同い年の子が自分より劣っていると感じてしまうのだ。しかし結果的に私の予想は完全に外れることになる。


 「うわ~すげーかわいい!お姫様みたい!」


 私と初めて会った桜木瞬の感想はこれだった。いきなりこの挨拶、しかも同年代の子とあまり関わろうとしなかった私は自分の容姿が他の子に比べてどうかなんて考えたことも無かったため面食らってしまった。


 「えっと……桜木瞬君だよね?初めまして、隣の家の天野雪です。」

 「うんよろしくね!じゃあ早速公園で遊ぼうよ。」


 自己紹介したらすぐに私は彼に手を引かれ、驚いている内にあれよあれよと引っ張られ近所の公園に連れてかれた。


 「おーい、仲間に入れて~」


 すでに公園で遊んでた子どもたちに彼は無邪気に声をかけた。この年齢の子どもたちは人見知りをしない方で、すぐに私と彼を仲間に入れてくれた、しかし私を仲間に入れる時は少し戸惑ったような顔をしていたのを私は見逃さなかった。

 そして始まった鬼ごっこ、私は普通の女子よりは全然体力があったが運動神経がいい方の男子とは互角といったところ、鬼ごっこなんて幼稚園以来していなかったが全力で逃げた。

 その内あることに気付いた、桜木君以外の子が鬼をやるとき私を狙おうとしないのだ。捕まえられないからではない、さっきも言ったように当時の私の体力は際立って良いものでは無かった。つまり…結局相手にされてないのだ。それがわかった途端久しぶりにやって楽しいと思えていた鬼ごっこが急につまらなくなった。やる気を無くしてダラダラ歩いてもみたがやはり避けるかのように私を捕まえようとしない。

 そんなことを続けていたらどうやら桜木君もそのことに気付いたようだ。


 「みんなズルイよ、なんで雪ちゃんは狙わないの?」


 どうも私が鬼にならないのがずるいと思ったみたいだ。(ちなみに桜木君は走るのが遅くよく鬼になった。)だが言われた子ども達は言いづらそうにしながらも結局こう言った。


 「その子は特別だから邪魔しちゃいけないんだってママが言ってた。」

 「そうそう、話すのもだめだし一緒に遊ぶのもケガさせちゃうからだめだって。」


 ……あーあ、桜木君も知っちゃった。これでこの子も明日から他の子みたいに私に関わらないようになって……。そんな風に考えてた私の手が急につかまれた。


 「そんなことない!雪ちゃんはただのお姫様だもん!」


 私の手をつかんだ桜木君はびっくりするほど大きな声でそんなことを言った。

 みんなびっくりしてなにも言えずにいて、私はなんとなく


 (ただのお姫様ってなに?)


 なんて考えていたりした。


 「みんなおかしいよ、こんなにかわいいお姫様と話したり遊んだりしないなんていじめみたい、僕はいじめなんて絶対しないよ。」


 桜木君が続ける、いじめという単語がでると他の子ども達は戸惑うそぶりをみせた。


「僕もう帰る。」


 そう言って桜木君は公園を出て行ってしまい私も慌てて追いかけた。去り際に公園に残った子ども達を見ると困った顔で立ち尽くしていた。


 「ありがとう。」


 桜木君にそういうとちょっと照れた顔をしていた。

 家に帰った後公園での話しを両親にするとお母さんの方が泣き出してしまった。そしてそのまま桜木君の家に行き、泣きながら桜木家の人にお礼を言っていた。私のお母さんのその様子を見て我が家の事情が深刻なものだとさとった桜木君のお母さんは、それから近所の人と積極的に関わるようになりその1人1人に


「天野さんの家の娘さんは賢いだけでただの女の子、あなた達が特別視しているせいでどれだけあの家が苦しんでいると思う?」


 と話したらしい。社交的な桜木母さんの言葉は影響力が強く、それ以降近所の人の私達家族に対する対応が少しずつ変わっていった。


 夏休みの間はずっと桜木君と2人で遊んでいたが夏休みが終わり新学期が始まると、親に言われたのだろうか、クラスの子が少しずつ私に話しかけてくれるようになった。最初は本当に少しの会話だったけど私が桜木君と普通に話しているのを見てだんだんクラスの子もよく話しかけてくれるようになった。

(ちなみに学校の配慮か私と桜木君は同じクラスだった。)

 そのうち遊びにも誘われるようになり全く他の子と変わりなくクラスに馴染めるようになった。ほんの1年前はこんな風になるなんて夢にも思っていなかったから桜木家にはいくら感謝してもしたりない。


 それから時が経ち小学6年生になったころ、私は学年内の女子からかなり人気がある男子に告白された。私の友達は当然付き合うと思っていたようだが私は即断った。当然だ、私が好きな人はあんな顔が他の人よりちょっとマシ程度の男子じゃない。

 その頃には私は自分の恋心を自覚していた。あの公園で他の子の言うことを聞かず私を守ってくれた彼、クラスに馴染めないでいた私を他の子と関わらせようと積極的声をかけてくれた彼、初めて会った時からずっと私の隣に居続けてくれた彼、桜木瞬君のことが私は大好きなのだ。


 中学生になり部活動等でお互い忙しくなり彼と会う時間が減るのが嫌だった私は、教室でより彼と一緒に居られるようにずっと彼に着いてった。勉強も一緒にするし体育の男女混合ペアでもいつも一緒、私は自分の才能をあまり使わないようにしていたけどそれでもテストをすれば必ず彼に勝つし、運動も男子の彼よりできた。

 嬉しい、これで彼に教えるといった名目でもっと彼と一緒にいられる。

 しかし中学生になると思春期と言うか……彼と話すのが恥ずかしくなった。彼の顔を見たり話をするだけで嬉しくてだらしない顔になっちゃう、それを隠そうとしてつい思っても無いひどいことを言ってしまったりもした。

 中学生の途中からなんとなく彼が私を避けるようになったと感じる。すごく不安になった、ひどいことを言ったから嫌われてしまったのかな。


いや!ごめんなさい、ゆるしてください、私を嫌いにならないで、お願い捨てないで、ずっとそばにいて、どこにも行かないで、もうひどいこと言いませんから、謝りますから、なんでも言うこと聞きますから、あなた以外の人なんてみんなどうでもいいの、あなたがいないとダメなの!


 苦しかったけどこれ以上嫌われるのがイヤだった臆病な私は結局彼との距離を縮めることができなかった。彼が側にいない残りの中学生生活は本当につまらなかった。バカでどうでもいい男達はちょっと外面を良くするだけで気があると勘違いしてどんどん告白してきたので全部ばっさり振ってやった、あーあ、瞬が告白してくれれば即付き合うのに。

 家族間の集まりで偶に瞬と会う機会があると、私が知らないところでバカな女に純真な瞬が騙されてないか絶対聞いたが、瞬に彼女は出来てないようだ、良かった~。

 そんな状態で迎えた受験シーズン、私の実力だったら本気でやれば海外の高校に留学もできる、と担任教師は言ったがそんな気は全くない、私は瞬が行く高校にしか行くつもりはない。

 ちなみに両親は私が瞬のことを好きなのを知っていてかつ応援もしてくれているので、私がその高校でいいと思うなら何も反対しないと言ってくれた。

 瞬のお母さんにこっそり志望校を教えてもらい無事に瞬と一緒に受かることができた。(この時なぜ志望校をここにしたか瞬に聞かれたが適当にごまかした。)


 高校生になってから、私はクラスの動向が知れるように女子のグループのリーダー的役割になった。中学の時もそうだったおかげで瞬に悪い女が寄り付かないか監視することができたからだ。

 瞬は高校での勉強はあまりできる方じゃなかったので家でつきっきりで教えてあげると提案したらすぐにのってくれた。これで瞬と頻繁に2人きりでいられるようになったので私は心の中でガッツポーズをした。


 そんな勉強会をしていたある日、勉強が終わると瞬が相談があると言い出した。どうも今日はいつにも増して勉強に集中できてないと思ったが原因はこれか、とりあえず聞いてみよう。


 「同じクラスに白浜さんって女子がいるじゃん?」


 白浜さん…?ああ思い出した、女子のグループに入らないでいつも1人でいる目立たない子だ。でもどうして瞬がクラスのそんなどうでもいい女子の話をするのだろう?


 「実は俺あの子に告白しようと思ってるんだ。」


 …………え?ナニヲイッテルノ?今聞こえた言葉はナニ?


 「だーかーらー、同じクラスの白浜さんのことが好きになって告白したいから、お前に相談に乗ってほしいんだよ。」

 「うそ、そんなわけない。」


 そうだそんなわけない、教室にいる間はほぼずっと瞬のことを見ていたが大抵1人でいてましてや女子と一緒にいるところなんて見たことない。


 「そりゃ教室では話すことはないけど昼休みにはよく図書室ではなしてるんだよ。」


 うそ、瞬が告白する?私以外に?瞬は私のことをお姫様って言ってくれた、私にとって瞬は王子様なのに違う人に告白するの?

 なんなのその白浜さんってそんなにいい人なの?確かに顔はそれほど悪くなかったと思うけどその程度で私の瞬を奪うの?そんなことできるはずがない。そうだ瞬は騙されているんだ、瞬はやさしいから悪い女に騙されてるんだ。そうに違いない!


 「それじゃあんた騙されてるのよ。」


 もうなりふり構ってなんかいられなかった。瞬が告白を思いとどまるように、私以外の女子とは距離をとるように必死で適当な言葉を並び立てる。


 「わかった、もういいよ。」


  ついに瞬が疲れたような顔でそう言って立ち上がった。やった、わかってくれた。色々ひどいこと言ってごめんね。でもあなたと一緒にいていいのは私だけなの。だから


 「からかわれてるってわかったなら告白なんてやめてそんな子とはもう話さないようにしなさい。」


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