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第32話 魔剣の目覚め

「……貴方は何者なんですか?」

「あぁあ! そういうの要らないなぁ……。君、私に殺されたい?」


 俺は首を横に振る。

 どうすればいい?星灯先輩は何処にいるんだ?

 ……そもそも封印って何だよ。


「名寄星灯……! やはり、貴方は神綺様を騙していたのですよ!」


 菫花は地面にほおり投げられていた剣を素早く手に取り、先輩に切りかかった。


「君はつまらないんだよね〜。……先に消えとく?」


 カシャカシャカシャ……という音を立て、剣は粉々に砕け散った。

 何をしたのか分らなかった。ただ、先輩は人差し指を、ひょいっ、というように少し動かしただけなんだ。


「……全然、分からないっすけど……元の星灯先輩に戻ってもらいますよ?」

「どうやってぇ? 君には無理じゃないかなぁ?」

「菫花、神綺は俺が助けてやる。だから、今は俺に従え!」


 剣が砕けちった事で戦意消失、その場に座り込んでいた菫花は、へ?、と顔をあげた。


「……何を言ってるのですか?」

「協力をしよう。お前は神綺を助ける為に、俺は先輩を助ける為に」

「……了承、するのですよ」


 でも、問題は方法だ。封印が溶けたのならば、早い話、封印してしまえば良いんだ。でもそれで問題は解決するのか?また、封印が解けたらどうする。

 王達なら何か情報を持っているだろうと、王達に目を向けた。


「……逃げ足だけは速いとか何なんだよ」


 椅子だけが取り残され、その場に王達の姿は無かった。デスタルの王の自己主義過ぎる行動に民衆が疑問を抱かないのも謎だ。慣れてしまった、と考えるのが妥当だろう。

 けれど、これで王達には先輩について問い詰められなくなった。


「待っててあげてるんだから、早くしてねぇ?」


 彼女はこの状況すらも楽しもうとしているようだった。

 戦いは勝ち目なし……ならどうする?頭を使え!


『 虹波、貴方は――選ばれし子。自分を信じて? 』


 頭の奥で母さんの声が聞こえた。選ばれし子、という言葉は何処かで聞いた事があった気がする。俺は記憶の糸を辿った。


『この魔剣はグラムって呼ばれてるの。――選ばれし少年よ、我を目覚めさせよ。グラムの伝承。まぁ、私にとってはお守りみたいな剣だから関係ないかな?』


 そうだ、思い出した。デスタルの事を先輩が説明してくれた夜、魔剣についても先輩は教えてくれたんだ。

 その魔剣の伝承が似ていたんだ。母さんの言葉。


 ――……。

 魔剣を抜きたいなんてさらさら思わない。だけど、俺がその選ばれし子だという可能性は血筋からして否定できないんじゃないか?

 人間とデスタルの者との間に生まれた、人間でもデスタルの者でも無い俺ならば。


 先輩で無い人を先輩と呼ぶのはどうかと思ったが俺はそれを声にした。


「先輩、楽しませてあげますよ。魔剣、俺に渡してくれませんか?」

「魔剣って! 正気なのですか?」


 小さい手で、俺のバトラー服の裾を掴んだ菫花は声をあげた。

 先輩は、ふぅぅ、と息をつくと、


「なーんか、言う事聞いてるみたいで(しゃく)だけど……良いよ♪」


 左手の手の平を胸の前に出し、「グラム」と口にした。すると、手品だ、とでも言うようにそこに魔剣を出してみせた。


「どうぞ? うさぎさん」


 俺の名前を知らないのだから、見た目の特徴を呼ぶのは当たり前かもしれないが、うさぎをピックアップしないで欲しかった……。

 先輩から投げられた魔剣をキャッチし、手に持つ。

 一見変わった様子は見うけられない。


 俺は一度ゆっくりと息を吐くと、思い切って短剣を抜いた。それは驚くほど簡単に、するり、と抜け鋭い刃を見せた。


「貴方……何者なのですか!?」


 隣で菫花が俺をまじまじと見つめた。

 ……本当に抜けた。

 本当は誰でも抜けるんじゃないか?という気さえしてくる。何だか拍子抜けだ。

 でも、これで少し希望が見えた。


「菫花、フォロー宜しく」

「言われなくても分かってるのですよ!」


「はぁ。やっと、準備出来たみたいね。楽しませてね、うさぎさん♪」


 そう言い、先輩は手の平に俺と同じ様な長さの短剣を具現化した。

ダン、と軽く地面を蹴る音がした。

 ――見えなかった。

 先輩は俺の目の前に剣をかざす。俺はやっとの事で、それを剣で受け弾き返した。


「……炎」


 遠くから菫花が先輩に攻撃を定める。


「氷!」


 菫花の攻撃は先輩によって空間に凍る。そのまま先輩は俺にも氷の攻撃を向けた。


「……くっ」


 よけられないか……?

 短剣で防げるか分からないが今は防ぐしか――。

 そう思い、咄嗟に短剣を自分の前に出した。

 先輩の攻撃と短剣がぶつかる。


「なっ!?」


 先輩の方も予想外の事が起きたのか、驚きの声をあげた。その声で、俺は、ぎゅっ、と閉じていた目を開いた。すると、氷の攻撃は何処にも無く、俺がただ、剣を目の前に出しているだけだった。


「そういう事なのですか。グラムはデスタルのこの力を無力化出来るのですよ」

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