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第23話 修羅場っ!?

 少しして、試着室のカーテンが開きアリスの服から着替えた先輩が出てきた。本番は赤いリボンも付けるのだと言う。


「菅原はこれよ?」


 遠山に渡されたそれを見るとバトラー服の様なものだった。さらに、うさ耳のカチューシャまである。

 ……これは、まさか。


「うさぎ役でも、やれってか?」

「うん、私は女王だし……笹神は帽子屋だし……ね!」

「分かったけど、試着はしないからな」

「……頼んでないわよ」


 何だ、その馬鹿にしたような笑いはっ。

 今の流れで試着するのか、と思っていただけなのに、馬鹿にされるとは何だか気に食わない。


「じゃあ、買ってくるわ。三人とも、外で待ってて」


 そう告げると、遠山は全員分の衣装を持ち会計へと向かった。言われた通り、俺達は外で待つことにした。


「あとは……もう無いよな?」

「そうだな。でも、もう昼過ぎだぜ……何か食べよーぜ?」

「花音ちゃん来たら、お店入ろうか」


 すると、ここで俺の腹が鳴ったのが分かった。

 この後、何も無いならゆっくりするのも有りか。


「……っ!」

「どうした? 虹波」

「直君、私達ちょっと行ってくる」


 先輩は俺の手を引き、直にそう言い残すと、不快感と違和感の方へ向かう。


「妖魔か……頑張って下さーい」


「毎日、毎日、出現しない日は無いんですかね?」

「直君の言った通りなら予兆……だよね。もうそろそろなのかも」

「あ、いた……っ!」



「クロスエンフォース」


 それを言ったのは俺達では無かった。

 ロリータファッション、赤いリボンの付いた金髪のポニーテール、そして幼女。菫花だ。

 お前ら、ここで遊びすぎだろ……と思わず思ってしまった。


 妖魔は形からして、蜂。針が鋭く尖っている。


「優帆、電撃で行くのですよ!」


 菫花と優帆は先輩と俺の様に飛んで上からの攻撃では無かった。

妖魔と同じ高さ――地上――で、攻撃を放ったのだ。

 電撃は命中。

 妖魔は動きも鈍いため俊敏さに長けている妖魔以外は攻撃を外す、という事は毛頭ないのだが。


「良い感じなのですよ。……浄化されるのです!」


 パージ。他の人が浄化するのは初めて見た。

 広がった空気の輪は妖魔に触れ、ぴたっ、と時を止めたように停止させた。そして、ぱりん、と光の欠片となって消失した。


「クロスリリース」


「流石、菫花様。お早い浄化でした」


 相変わらず、目は髪で隠れている為、優帆に対して少し警戒心を持ってしまう。


「妖魔、浄化してくれてありがとうございます」


 先輩が、ぺこり、と頭を下げ菫花の前へと足を進めた。


「……な、何で居るのですか! 近づくな、なのですよ!!」


 こちらを睨みつけ、明らかに動揺した素振りを見せる。菫花は後ずさりし、何かを決したかの様に口を開いた。


「……新綺様を私によこすのですよ! 何時までも貴方が持っているものでは無いのですっ」


 びしっ、と先輩に人差し指を向ける。


「新綺って……?」

「現クロスプリンス。私の元婚約者だよ」

「こ、婚約者ぁ?」


 待てよ……。先輩がクロスプリンセスだった時、新綺がクロスプリンスだったから、婚約者となった。で、先輩がクロスプリンセスじゃなくなった後も、彼はクロスプリンス。だから、今のクロスプリンセスとの婚約が決まる。イコールこうか!前の婚約者VS今の婚約者。

って、修羅場じゃねーか!!


「菫花さん、でしたっけ? 新綺さんとは別にそんな仲ではありません。だから、安心して――」

「……むっかつくのですよ! そういう所が嫌いなのです! 知ってるのですか? 新綺様が毎日毎日、何を思われているのか」


 菫花は相当新綺が好きなようだ。それだけ、好意を持たれているのにも関わらず、新綺はまだ、先輩が好き――そういう事だろうか。

 ドロドロだ。恋愛とか、何か大変だなぁ。


「菫花様。お時間が……」

「………。次会ったら、絶対に地獄へ叩き落としてあげるのですよ!」


 そう言い放つと、彼女達はその場から姿を消した。妖魔を倒してくれた件については感謝したいが、先輩を地獄に落とす等とほざいている事については、嫌悪せずにはいられない。


「菫花さんと……仲良くは出来ないのかな?」

「無理じゃないっすか? あの態度じゃ流石に……」


 それを聞いた先輩は、しょんぼり、と肩を落とす。

 あれでも、仲良くしようと思えるのは尊敬に値するな。


「おーい! やっと、見つけた。大丈夫だったかぁ?」


 向こうから駆けて来たのは直と遠山だった。少し時間が立ちすぎたのか、心配そうな表情が見て取れる。


「大丈夫、大丈夫。現クロスプリンセスが妖魔を浄化させてくれたからな」


 俺は簡単に、状況説明をする。でも、菫花が先輩を憎んでいることは言わないでおいた。先輩に彼女達と仲良くする意志がある限り、俺の勝手な考えを遠山と直に話す訳にはいかないからな。


「クロスプリンセスって、その……デスタル? で一番強い人だっけ?」


 自信なさげに遠山は問いかける。

 こくり、と先輩は頷き、


「そうだよ。クロスプリンセスとクロスプリンス。男女でそれぞれ居るんだ」

「へぇー」


 それにしても、昼飯を食べていなかった。もう予定無いから、ゆっくりしよう、何て思っていた矢先にあれだったからな。


「何か食べに行かないか?」

「そうだよ! 食べに行くんだよ! 虹波達が行っちゃうからさぁ」

「あ、そうだったよね。ごめんね、直君」

「先輩は許します!」


 なぜ、俺は許されないっ!はぁぁ。

 俺達は、昼食を取るべく飲食店へと向かった。

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