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虹の先  作者: kazuha
塞翁之馬
94/211

3ー33

 結局謝れなかった。挨拶ひとつで窓を閉めたのだ。なんて思われただろう。もう、嫌気が差しただろうか。

「お! おはよう!」

 急に肩を叩かれ、元気な声で吐かれた挨拶は耳をつんざく。誰だよと後ろを向くと、この時間では有り得ない顔がそこにあった。

「おはよう、ともちゃん。ってかはやいね」

「失敬な! 人を遅刻魔だと言わんばかりに!」

「そこまで言ってないし」

「むしろ無遅刻無欠席だ!」

 まぁ、そんだけ元気なのだからそれもそうだろう。溜め息ひとつ、歩き出す。

「なんか元気ないね」

「ともちゃんが元気なの」

「そんなことないよ! 今日は絶不調」

「どこが?」

「お腹痛い」

「あら、大丈夫?」

「死にそう」

 そう見えないのはツッコミ待なのだろうか。

「ほれほれ、私のことはいいから悩み事なら聞きまっせー」

 ふと見上げた空。薄い雲が段々と消えていく。

「もしさ、気になっている人に絶対に知られたくないこと知られたら、どうする?」

 直ぐに返答はなかった。一緒に空を見上げて、そして一緒に視線を下ろした。

「そういうのってさ、知られても良いような人が結局は好きな人なんじゃん?」

 そう言って2歩前に出るともちゃん。

「私に彼氏がいるとかさ、知ってるじゃん?」

「でも、それが誰だかまだ知らないんだけどね」

「それはそれ、これはこれ」

 都合のいい話だ。

「それでも、内緒を話せる相手が、本当の、信頼の出来る相手なんだと、思うんだけどな……」

 思い返した。私の内緒を彼に知られて私はなんて思ったのか。深く記憶を抉る。

「まぁ、人生なんてどうにでもなるさ。いいことしてればお天道様がご褒美くれる」

「おばあちゃんのお言葉ですね」

「そうそう。今じゃおばあちゃんがお天道様だけどね」

 また見上げる空は綺麗に晴れ渡っていた。まるで、ともちゃんに合わせるように。

「よし、悩み聞いたからたこさんウインナー多めに頂戴よね」

「嫌だ」

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