3ー31
紳助の優しさに浸りながら、恐怖を涙に表した。気がつけば集団は居なくなっていた。それと同時に外も夕闇が色を濃くしていた。
「帰ろうか」
いつも通りの言葉に私は小さく頷くだけだった。
いじめは継続的に続いた。それでも我慢は出来た。紳助が中学に上がるといじめもピタリと止まる。
長かった地獄が終わったのだ。
その頃には一緒に遊ぶ事も減った。学校が違えば当たり前に一緒にいる時間が減るのは当然だった。家で窓を開けて話すくらいの付き合いになった。
私も中学に上がると直ぐいじめにあった。理由なんて簡単である。紳助と幼馴染みだから。飯田ファンクラブの子達にそれは酷いいじめを受けた。
私は学校に行かなくなった。登校拒否。学校側は直ぐに対応してくれた。しかし直ぐには登校しようとは思えなかった。
部屋に引きこもり、やることもなく、昔みたいに小説を書いていた。とても甘い恋愛小説。今、夢見ているそんな妄想をそこに書いていた。
登校するようになってもひとりは続いた。授業中にこっそりと小説の続きを書き、日々を乗り切っていた。
そんなある日、私がトイレに行っている隙に小説を書いていたノートをいじめっこのひとりに見られた。その後は察しの通りである。読み上げられた黒歴史と呼べるそれに私は涙した。
ゲラゲラと笑う子達からノートを奪ったのは、紳助だった。
「面白いねこれ。誰が書いたの?」
その一言は私を救うのには十分過ぎる一言だった。




