3ー27
いつだ。いつ落とした。なんで確り持っていなかったんだ私は。
これからどうなる。正体をばらされる? そんなことになったら周りの人に迷惑がかかる。それはダメだ。
しかも、こんなダメ女で且、恋愛初心者の小説なんて聞いたら、誰も読んでくれなくなる。それはもっとダメだ。
どうしたらいい。どうしたら……。
椅子に座ったまま、机に置かれたメモ帳を眺める。その黒い表紙がより黒く見える。まるで混沌の闇が目の前に広がっているようだ。
雨は止んでいた。帰ろうと思えば帰れた。しかし、力が全く出ない。体中震え、先の見えない絶望に恐怖し、自分の作ってきた幸せが崩壊するのが怖い。
どうしようもできないのか。私は考える。ただ、助かる方法なんてなかった。思いつかない。
そんな時、カバンの中の携帯が鳴る。コールが3回で止まらない。これは電話だ。金縛りが解けたかのように携帯を取り、相手を確認する。
「なんでよ……」
画面には飯田紳助と映っている。私の親指は自然と緑色を押す。そして耳元に持っていく。
「お、今日さ、早紀んとこお邪魔するからさ、」
「なんでよ……。なんでいつもこんな時なのよ!!」
理性がぶっ飛ぶ。あぁ、こんな感じなんだ。胸に溜めておいた言葉が着火と共に燃え上がり、温まった水は瞳に溜まることなく流れ出す。沸騰した合図のように泣きわめく私に、彼はなにも言わずそのままでいました。




