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虹の先  作者: kazuha
塞翁之馬
88/211

3ー27

 いつだ。いつ落とした。なんで確り持っていなかったんだ私は。

 これからどうなる。正体をばらされる? そんなことになったら周りの人に迷惑がかかる。それはダメだ。

 しかも、こんなダメ女で且、恋愛初心者の小説なんて聞いたら、誰も読んでくれなくなる。それはもっとダメだ。

 どうしたらいい。どうしたら……。

 椅子に座ったまま、机に置かれたメモ帳を眺める。その黒い表紙がより黒く見える。まるで混沌の闇が目の前に広がっているようだ。

 雨は止んでいた。帰ろうと思えば帰れた。しかし、力が全く出ない。体中震え、先の見えない絶望に恐怖し、自分の作ってきた幸せが崩壊するのが怖い。

 どうしようもできないのか。私は考える。ただ、助かる方法なんてなかった。思いつかない。

 そんな時、カバンの中の携帯が鳴る。コールが3回で止まらない。これは電話だ。金縛りが解けたかのように携帯を取り、相手を確認する。

「なんでよ……」

 画面には飯田紳助と映っている。私の親指は自然と緑色を押す。そして耳元に持っていく。

「お、今日さ、早紀んとこお邪魔するからさ、」

「なんでよ……。なんでいつもこんな時なのよ!!」

 理性がぶっ飛ぶ。あぁ、こんな感じなんだ。胸に溜めておいた言葉が着火と共に燃え上がり、温まった水は瞳に溜まることなく流れ出す。沸騰した合図のように泣きわめく私に、彼はなにも言わずそのままでいました。

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