3ー25
本当に何が起こっているのかわからなかった。ただ、直ぐに離れなければと思って突き飛ばしてしまった。
「ご、ごめん」
「いってー。僕こそごめん。驚かせちゃったね」
静かな車内で二人の言葉だけが鳴る。
その後直ぐに緊急停車のお詫びと原因解明をしていると放送が流れる。
これは参った。悪いことが起きた日は連続して悪いことが起こる。これでまた走る羽目になると思っていると直ぐに電車は動き出した。
「あ、動いたね」
「遅刻するかと思った」
「伊藤さんってやっぱり真面目だよね」
「え?」
「 」
何を言ったのか理解できなかった。囁きにも似た声で聞き取れなかっただけなのかもしれない。ただ、本当によくわからなかったのだ。
「え? なに?」
「なんでもない」
あっさり受け流すと彼はにこっと笑う。
放送で次は学校の最寄駅であることを知ると車内にいた学生は各々出る準備を始める。少し遅れたせいで着いたらダッシュするしかないのだから。
電車が止まり扉が開く。
2人でゆっくり行けたらまた違った道も、あっさり終わって学校に着く。私は息を上げているが、彼は流石と平然としている。
「じゃぁ、さっきの話し、お願いね」
「うん。了解した」
上履きに履き替えながらの会話。なかなか賑やかな校舎内では自然と声も大きくなった。
「あ、それとさぁ」
「ん?」
「早紀ちゃんって呼んでもいい?」
「……へ?」
「ダメならいいよ。なんか伊藤さんって言ってるも他人行儀みたいで嫌でさ」
「う、うーん」
これは了承してもいいのだろうか。相手は彼女持ちだ。他の女の子と親しく呼びあっていいのだろうか。そんな葛藤も始まりのチャイムで一旦かき消される。
「やばっ!」
最後のひと踏ん張りと廊下を駆ける。