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虹の先  作者: kazuha
塞翁之馬
83/211

3ー22

 自分の書いた文字を読み返す。それは物語を読むのではなく文字を見る作業。それが終わってからようやく物語を見返す作業になる。推敲と呼ばれる作業は量が量なだけあって大変である。書いているときは気分が乗るのにどうしてこう直す作業は面倒くさいのか。

 などと喚きながら返ってきた大量の紙を見る。


『おい、君! 大丈夫か!』

 好きな彼の声が飛んでくる。息ができない私は必死に声を出す。

『来ないで! お願いだから来ないで!』

『何故だ! そんなにも苦しそうなのに!』

『うつってしまいます! うつってしまいます!』

 

「……うつるねー」

 唸るような声が出る。これは確か風邪を引いた時にともちゃんに言った言葉だったような気がする。こんなふうにふざけていたら本当にうつっちゃったんだっけか。

 そんな過去に浸りながらお母さんが作ってくれた冷えたココアを飲む。糖分がなんとも体中に染み渡る。

 夏もそろそろ本番。日常で気にしなくとも段々と暑さを増していっている。地球温暖化とも言われるほど年を重ねる度に暑くなっている気がする。とは言え、35度を超える日は毎年さほど変わらない。いつも通り暑くて、いつも通り耐え難い。

 そう言えばまだ私は扇風機を出していない事に気付いた。夏休みにならない限り使わないだろう。なにせ、原稿が飛んでしまう。

 大量の紙を机に置いた。椅子から立ち上がり大きく伸びる。そしてココアを持ってガラス窓を開ける。

 空は曇っているようで月は見えなかった。天気予報では晴れると言っていたのに、これは雨だろう。私の天気予報、きっと当たらない、予報。

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