3ー19
重たい溜め息が出る。いや、心配した割りには大した成果もなく最早ちーちゃんの一言でなんとなく考えられそうなことだった。心配損というか、力んだ拍子なのかとても肩が重たく感じた。
そんなどんより雰囲気を醸していると肩をちょんちょんとつつかれる。それに驚いて直ぐに後ろを振り向いた。
「どうしたの? 溜め息なんか吐いちゃって」
森谷くん。それは極自然にしてくるから、むしろ身構えていた私が馬鹿に思えるようだった。
「なんでもないよ」
「嘘。心配事なら聞くよ」
「大丈夫。ホントに」
「ならいいけど」
私を思ってくれている。その気づかいがきっと私の中の美化補正が作動しているようだ。何故だか、あれだけ悪いことを印象づけられたのに胸の高揚は普段と変わらない、いやより一層高まっている。マイナスが洗脳した分、その振り幅が大きかったからだろうか。
「相談ならいつでものるからさ、言ってよ」
「うん。ありがとう」
ちょうど授業が始まる音が鳴る。その音に自然と前を向く。
未だに信じられないのだ。森谷くんがあのグループのひとりだと言う事を。絵理ちゃんに暴力を振るっていることも。出る杭打たれる感じで抑制がかかったみたいだ。よく思わない人が作り上げた噂。私はそう感じた。この噂がなくなったら彼はどこかの先輩の様に一躍の有名人になるはずだ。
そう、なるはずだったのかもしれない。
ファンタジーものの小説で天使よりも堕天使がもてはやされる様なものだ。悪役の方が栄える。
そう。ーーーー悪役だから目立つのだ。