3ー18
「まず、説明をお願い」
より彼に近づく。小さな声でも話せる様に。
「助けて欲しいんだ。絵理を」
「わかってる。だからその助けて欲しいっていう理由」
彼は困惑した。まさか理由無しに言っているのか?
「DVを受けてるんだ」
一瞬耳を疑った。驚かないでいられるか。結構な時間一緒にいるのにそんな感じには見えなかった。
「……しょ、証拠は?」
「……ない。でも、オレは見たんだ! アイツの、背中に……」
慌てて口を閉じる彼に不信感がどんどん募っていく。そもそもがおかしな話だった。冷静に聞くと何故背中を見る機会があったのか気になる所だ。
「いつ見たの?」
「……そ、それは……」
「ちょっと待って。そんな信憑性もない事で信じて、助けてくださいって言ってるの?」
「ホントなんだ!」
「なら、いつ見たかくらい、……話せるでしょ」
話しづらいことなのか、それとも嘘なのか。前者だとしても私の考えうる内容では助けようなんて思えなかった。不純だ、と感じるだけである。
「ごめん、やっぱり話せない。でも、信じて欲しい。嘘はついてないから!」
本当なのか? はたまた名演技なのか?
私に判断できるようなスキルは持ち合わせていないようだ。
「ごめん、直ぐにうんとは言えないや。信じていない訳じゃないけど、冤罪には仕立てたくないから。少し、考えさせて」
不服ながら頷く彼。私はもう一度謝罪してから彼に背を向ける。
「あ、ひとつだけ聞かせて。君と森谷くん、どこで知り合ったの?」
その問は返されることがなかった。やはり、ちーちゃんの言っていたことは確かだと裏付けるように。
「あそう。ありがとう」
そろそろお昼の終わる時間。サッカーも終わったのかぞろぞろと帰る人に紛れるように入り、教室へしれっと帰る。




