3ー17
校庭。昔は良く来ていた。幼馴染みとあって飯田先輩とよくサッカーをして遊んでいた。しかし、私は運動に関して鈍く、それで怪我する事が増えたため仲間に入れられなくなった。それからだろう。私がここに来なくなったのは。
一線を置いてサッカーの光景を眺めている飯田ファンクラブよりも離れた位置で久しく見なかったその光景を食い入るように見る。あの頃と比べて、また上手くなっているな。
最早最前線まで行ったともちゃんとちーちゃん。黄色い声援のひとつとなっている。
それを狙っていたかのように私は後ろを向く。
オウギ。それはより風格を見せつけている木。夏も間近に緑葉を震わせ、この学の生徒の成長をその人生と隣り合わせて魅せる。まるで時を刻むかのように。
その時のひとつとして、また彼はあるのかもしれない。まるで「秋雨」の続きを見るようだ。
気持ちのいい風だ。汗のにじむ肌に心地よく当たる。初夏の風とはよく言ったものだが、ここまで感じる事が出来たのは初めてかもしれない。心が澄みきって息を吐く。もう迷ってなんかいられないのだから。
私はひとつひとつ足を踏み出す。オウギの木に寄りかかって暗い顔をしている彼へと。
「えぇ、助けてあげますとも」
声をかけると私に気づいた様で顔を上げた。
「それが私の責任なら尚更ね」
まるで春一番の様な強風が私たちの間を駆け抜ける。冬に埋もれた心をこれから溶かそうとオウギが気を使ってくれた様だ。
そしてサラサラとオウギは手を鳴らした。