3ー14
教室に着いたとして席に座ることさえ出来ない朝。ちーちゃんの席にお邪魔させてもらう。カバンを床に置いて気になるふたりの行動を一瞥する。
相変わらず元気がない絵理ちゃん。それも構わず他のキャピキャピの女の子と楽しそうに話している森谷くん。意識しているとより一層不快だ。
「やーおはよー」
「おはよーともちゃん」
逸らしていた視線を声のする方に向ける。
「ってどうしたの!? そのおでこ」
大きな絆創膏が貼られ、そのガーゼの部分は赤くにじんでいた。転けたのだろうか。
「いやー、まさかボール頭にぶつけるとはさー」
「え? ボールに当たることある?」
「当たるんですー」
えへへ、と笑うとともちゃんは自分の席にカバンを置いて直ぐに私たちの和に入る。
「ってかさ、テストどうしよう」
「また、やりますか? いつものやつ」
「なに? また外す勉強法教えてくれるの?」
「そんなに根に持つなよ。悪気はないんだからさ」
「尚更悪質だよ」
3人で声を大にして笑った。
我干渉せず。ちーちゃんが言いたかったのはそう言う事なのだろうか。3人で楽しくやっていればそれだけで何の問題もない。
正義感なんてただの偽善行為だと言わんばかりに、過保護に私に諭した言葉。この時ちーちゃんはどこまで知っていたのか。
きっかけなんていつも突然だ。そう、この日唐突に絵理ちゃんが森谷くんの側から消えた時間があった。特に気にもしていなかったからか、気付きもしなかったけど。
たった1通のメールが私を小説の世界へ誘った。
after episode
私はそう記してから次にこの物語のどん底を描く。そう、それは実に簡単な一言だ。
「たすけて」