3ー13
最近の絵理ちゃんの様子がおかしいと感じてはいた。しかし、風邪かなんかだろうと感じてしまった私はその本当の理由から遠ざけるように思考していのかもしれない。
「でも、無理はしないで。相川絵理がどうなろうとボクには関係ないけど、早紀が傷つくのは見たくないし聞きたくない」
「その気持ちありがたいけど、私にとって絵理ちゃんはそういう存在だから。私のせいだから、私がしっかりと導かなきゃ……」
不意に抱きつかれる。唐突過ぎてその暖かさが嫌に優しいことを嫌った。
「その正義感が心配なのさ。昔からそう。真っ直ぐなことはいいことだけど、時には折れ曲がることしないと。真っ直ぐな鉄の棒が曲がったらもう二度と真っ直ぐに戻らないんだからさ」
強く抱きしめられるそれは、柔らかくて温かくて。なんか懐かしい気持ちだった。昔にもあったような、そんな気がして。
ちーちゃんが離れる。その表情はいつものような、小動物の顔だった。
「止めちゃってごめんね。教室行こうか」
私は小さく頷いて部室を出る。
段々と賑やかになっている廊下に出て私たちの教室へと向かう。今日はとても気分がよくなかった。