3ー11
「ねぇ」
雨の水曜日。とても憂鬱な日。登校中、廊下を歩いていると後ろから声をかけられる。それがちーちゃんなのは直ぐにわかったが何故かその声色は緊張感を帯びていた。
「ちょっとこっちいい?」
「ん? いいよ」
特に深く考えずにちーちゃんについていく。扉を開けて入る。そこはバレー部の部室だった。どうしてこんなところにと思いながら中に入る。
「ごめん、閉めて」
言われるがまま、ゆっくりと閉める。部屋の中は異様に静かだった。それもそうだ。部室等は教室から幾分か離れていてる。この時間にここに来る人なんてほとんどいない。
「急にごめんね」
ちーちゃんはしまっていたカーテンを少し開けて外の様子を伺った。
「大丈夫。だけどどうしたの?」
部室ということもあってか、色んなものが置いてある。特に目新しいボールや使い古したボールなどが多く、それを保管する場所の様な使い方をしている。
少しの沈黙を保っていたちーちゃんはカーテンをしっかりと閉めて私の方を向いた。ようやく、その重たそうな口を開けたのだ。
「いや、別に人から聞いた事だから間に受けないで欲しいし、自分の感覚で否定するなりして欲しいの。いいかな?」
「うん」
嫌な緊張感を保っていた。私の心臓も鼓動を早める。
「うん。じゃぁ、話すね」
前置きを示した上で私をその鋭い目で見てくる。
「森谷雅美のことなんだけど、最近やけに相川絵理と親しいと思えばどうやら付き合っているらしいじゃない。それも皆で遊園地に行った日を境に」
私を睨みつけるのはそれをわかった上でだろう。