1ー7
白ける雨。一気に学校に行く気を失わさせる。『秋雨』の流行も収まり、ファンレターもやっと収まった。毎日段ボール2つくらいで届くのだから困ったものだ。捨てるに捨てられないし。出版社に返して処分してもらっている。
行きたくもないが行かざるを得ない。制服に着替えて朝ごはんを食べる。お弁当を持って学校に向かう。
雨は嫌いだ。濡れるし。冷たいし。気持ち悪いし。髪跳ねるし。塀を登るかたつむりを見つけては気持ち悪いと言いながら取って別の場所に移す。意味はない。
そうそう、電車も混む。真夏前のこのむわっとした熱気が嫌いで嫌いでついつい乗るのをためらうが、いつの間にか乗っている自分がいる。
学校に着けば跳ねた髪をいじりながら席に座る。
「1限世界史だよ」
ともちゃんがとなりで呟くと私はこう返す。
「鬱陶しい」
ノートを広げ前の内容を見返しながら私は物語の進展を考えていた。プロットから外れ上手く戻せないかと練っている最中なのだ。
「でもさぁ、雨っていいよね」
「なんで」
私はともちゃんを疑わしい目で見る。ともちゃんは外を見たまま明後日の方に脳内が移っているのがわかった。
「あきあめつづればまたぢはゆるみ、あきぬほろほろのつゆはまだきみのほほぬらしつづけよう」
「恥ずかしげもなく遺書の一文を呟くのはやめにしないか」
「いやぁ、古典的な書き方だから勉強になるかなって」
「だからって古典じゃないからね」