3ー8
目が覚めると私は支度をして学校へ向かう。それは普段と変わりない日常。勉強をしてお昼はご飯食べて、終わったら帰るという流れ。
変わったことといえば絵理ちゃんの表情が暗くなってきているところだろうか。体調が悪いのだろうか。そろそろ定期試験があるのに大丈夫だろうか。
と、いうのをお手洗いの時に出会ったので話しかけてみた。
「大丈夫? 体調悪そうだけど」
「ん? あ、早紀ちゃん……」
言葉に気力が含まれていない。魂ここにあらずと言った感じだろうか。
「大丈夫だよー」
にこっという笑顔を返してくれた。本人が言うのであれば間違いないだろう。
「ならよかった。無理はダメだからね」
「うん、ありがとー」
先に出ていく絵理ちゃん。歩き方も何か違和感を感じてしまった。人ってあんなに足を曲げないでも歩けるのだろうか。
そんな事を考えて席に戻り、次の授業の準備をし始めると不意な寒気を感じた。真夏なのに。人のことをとやかく言える立場ではないようだ。
「あ、伊藤さん」
後ろから飛んできた声。どうしたんだろう、と後ろを向く。
「あのさ、暇な日でいいからさ、付き合ってくれない?」
「え? ん? なにに?」
一瞬意味を取り違えた自分に叱咤しながら会話を戻す。
「絵理がもうすぐ誕生日らしいんだ。何がいいか選ぶの手伝ってくれない?」
「あぁ、そんなことならいいよ」
「ありがとう」
手を取られ両手で包まれる。そして満面の笑みにドキッとする。不覚にも童顔の彼を可愛いと思ってしまった。
「い、いえいえ」
「それで、いつが暇かな?」
私は考えた。執筆も一段落して感想待ちだ。むしろ早い方がテストにも被らないしで楽だろう。
「いつでもいいよ。今日とかでもさ」
「じゃぁ、今日お願いできる?」
まさか本当に今日になるとは。驚いていると彼が顔を近づけてくる。
「どうしたの? 無理なら別の日でも」
「いや、大丈夫。ビックリしただけ。今日でいいよ」
「ありがとう」
また笑顔が見れた。いつ見ても綺麗な笑顔だ。
授業のチャイムがなる。私は前を向く。誰にも見られないように笑みをこぼした。