3ー3
翌日の朝には森谷くんに彼女ができたと言う情報は学内の隅々にまで届いていた。親衛隊たちが絵理ちゃんと手を繋いで歩いているのを見ていないはずがなかったのだ。学内新聞的なものはないが、あったら大スクープであろう。芸能人がスクープされるのと同じように一面にでかでかと書かれる。
むしろそれを望んでいるかのように2人はいちゃいちゃしていた。
お昼休み。そのいちゃいちゃが鬱陶しくてちーちゃんの席でご飯を食べることにした。
「まったく、後ろの席であぁもラブラブされてたらおちおちペンも握れんよ」
「あれあれおねぇさん。あっしがいない間にどんな波乱があったのかな?」
「それも気になるけど、なんでそんなにいらついてるの? 別にいつも通りほっとけばいいじゃん」
お弁当箱を開ける。今日はやけに質素だ。理由なんて簡単だ。寝坊。
「別に何もありませんよー」
「まぁ、いいんだけどさ」
そう言っていつもと変わらない野菜スティックをポリポリ食べるちーちゃんにしばしの安らぎを貰った。
「それで、森谷くんのことは好きなのかな?」
「おい貴様、タコさんウインナー鼻に突っ込むぞ」
「極自然に本気だよー。そんなに殺気を向けるなってー」
「今日はあげなーい」
「それでも貰うなり」
パクリと食べられるタコさんウインナー。いつもなら何も言わずにもぐもぐと食べるのに今日は違った。
「しょっぱっ!」
教室中に響きわたったその声は酷いほどに私の心に突き刺さった。