3ー2
不幸は望まなかった。それは事実。途中で計画を変えただけ。元々来るはずのない人が来たのだから仕方なかった。
「そう、香川くんの未練を断ち切るためにも早い方がいいと思った。逆も然りだけど。2人ともまだお互いを気にしてるから」
「それはなんでだと思う?」
「え?」
「その2人がお互いを気にするのはなんでだと思う?」
覆い被さるように飛んでくる質問。あやふやな自分の気持ちに整理を入れていく。
「別れた相手だし気まずく思っているんじゃないかなと」
「もし、まだお互いが好きだったら?」
「それは……ないから……」
「もしだよ」
そんなこと言われても直ぐに考えつくことではない。思考回路では小説のキャラが勝手に動いてくれるけど、実在する人となると動かない事が相当数存在する。性格を確実に把握できていないのだから当たり前なのだけど。
「想像できない」
「まぁ、それなら仕方ないね。もう少し考えてみなよ。先入観や気分で適当な行動するなんてよくないからさ」
風が強く吹く。トリートメントでつやつやと光る髪の毛が無造作にも遊ばれる。
「風邪引くなよ」
「夏よ? そんなことあるわけないじゃない」
「夏風邪ほど辛いものはないよ」
「そんなやわくない」
「気を抜いてるとなるよ」
「だから、平気だって」
その心配がウザくて窓辺から降りる。そして霧ガラスの窓をバンと閉める。
温かかったはずのココアは少しだけぬるくなっていた。