2ー45
「なら、私の推測を話すね。そう、全ての推測」
そこを畳み掛けるように言葉を繋いだ。
「辞めた理由。例えばそうね、大会前とかにしましょうか」
目をつむり、小説を書くのと同じように想像していく。
「1ヶ月くらい部活に掛かりっきりになるよね。遊ぶ暇もなく、ただ勉強をして部活して帰って寝るだけの生活。そんな中にいる君には彼女がいました。そう、寂しがりやの彼女。我慢している彼女を見て、優しい君は耐えられなくなった。そんな時に先輩に相談した。週1回でいいので彼女と会う為の時間を下さいとね」
香川くんの顔が段々と私に向いてきた。
「そんなこと聞いた先輩はこう言った。それなら、部活を辞めたらどうだ、と。変なこというかもしれないけど、そのくらい、両立出来ないのであれば、部活なんてやらない方がいい。君には才能がある。だから敢えてここで苦言を言おう。別に才能を活かすも殺すも勝手だ。俺には関係ない。それを彼女のせいにする事だけは許さない」
アイツの思考がシンクロする。きっとこんな事を言うだろう。そう、きっと。
香川くんは驚いた顔をしている。私を化け物とでも思っているようだ。
「それで君は部活を辞めた。彼女との時間を優先したのだ。だけどそれは彼女には理解できないことだった。サッカーをやっていた君が好きだった。なのに勝手にやめて、忍耐力のない男なんて嫌い」