2ー44
巨大な円はゆっくりとだかしっかりと回転している。まるで巨大な時計のようだ。夕闇も濃くなり、その刻を刻んだ観覧車もそろそろ今日のお勤めを終えようとしていた。
人一人として並んでいないこの乗り物に迷うことなく並んだ。
「それじゃ、いってらっしゃーい」
先に行く2人を見送る。とても恥ずかしそうにうつむいている絵理ちゃんを見ると覚悟ができていないのだなと悟った。事の流れとは言え、悪いことをしたと思っている。そもそも、あの感情はなんだったのだろうと考えても全く宛がわからなかった。
「それじゃ、私たちも行きますか」
「そうだな」
面白くなさそうな返事だった。こっちは分かり易いくらいに未練たらたらだ。
向かい合って座る。とても座り心地がいいとは言えない。鉄の上に硬いマットを敷いているだけで他に何もないのだから。
会話もなくただただ上がっていくのを眺めていた。
「ねぇ、正直なこと聞きたいんだけどさ、いいかな?」
外に向けていた目線を戻す。これは、私が知りたいことだった。
「絵理ちゃんのこと、まだ好き?」
香川くんは目だけを私に向けてくる。それは睨むでもなく、無関心にこの状況を過ごしているだけなのだと思う。
「別に」
「そう、じゃぁ森谷くんと絵理ちゃんが付き合ってもいいんだね」
「そんなの2人の勝手じゃんか。オレの知ったところじゃない」
木よりも高い所まで来た。そろそろ眺めが良くなってくる。山に囲まれたこの場所に地平線を想像して、その奥にあるだろう大海原を越え、異国の人の生活を想像する。
「まぁね。私もどうでもいい、正直な所ね。じゃぁさぁ。森谷くんとはどうやって知り合ったの? サッカー部辞めてバスケ部に入った訳でもないんでしょ? クラスも違うのにさー」
「そんなの覚えてねぇよ」
「ふーん、そっか」
ずっと引っ掛かっていたこと。それを紐解くように私は質問をしていく。
「じゃぁ、サッカー辞めた理由でも聞こうかな。今年にはレギュラー取れるはずだった位、上手かったらしいじゃん? なにを理由に辞めたのかな?」
返事が直ぐには返ってこなかった。言い訳を探している。私にはそう見える。