2ー43
「えっ……」
喉につっかえたような声。彼女の焦りを瞳の奥に感じると肩にかけていたハンドタオルで手を拭く。
「だってそうでしょ? それともやっぱり、香川くんのこと……」
「わかったわよ! 告白すればいいんでしょ」
声を荒らげられてやっと冷静に戻った。今、悪魔が私を操ったかのように憎悪の塊が消え去ったのだ。その憎悪の原因なんて考えもしないまま、ただただ彼女を怒らせただけだった。
ツンとしたままお手洗いを出るとそろそろ日が暮れ始めていた。閉園ももう少し。今まで園内を賑わしていた子供たちも疲れ果ててお父さんの肩で寝ている。
「お、やっと戻って来たかー」
「最後にあれ乗ろうよ」
既に2人で相談していたようだ。最後はやはり観覧車だった。
「いいじゃない」
私がニヤリとすると次の提案をする。
「なんなら2人づつで乗らない? グーとパーで分かれてさ」
「いいねーそれ」
絵理ちゃんが私の意図に気付いたのか直ぐに同意してきた。
「もちろん男女別でね」
森谷くんも香川くんも納得していなさそうだ。半ば無理矢理といった感じだ。せっせと煽り、私と絵理ちゃんで分かれる。事ははじめからしないつもりだった。
「絵理ちゃん、2人でグー出しましょ?」
「え?」
「森谷くんがグーだったら、私が間違えた事にして、もしパーだったら絵理ちゃんが間違えた事にすればいいの」
「なるほど」
2人で目を合わせて強く頷く。
そして結果を合わせる。それはもちろん私の計画通りになる。
「あ、間違えた!」
絵理ちゃんがパーに変えるとそれで森谷くんと絵理ちゃんのペアが出来上がる。
「それじゃ、乗ろうか」
私は先行して、観覧車へ向かった。