2ー30
「どうしたの?」
私から香川くんに話しかけるのなんて下卑した日以来だろうか。気分を害しているかと思ったが言われなれているのか、へとも思っていないようだ。
そんな彼の反応が明らかにおかしかったので取りあえず聞いてみることにした。
「なんでもねぇーよ」
不機嫌なのは私のせいなのだろうか。いや、どちらかというと森谷くんに対する絵理ちゃんの言動だろう。
「なーにイラついてんのよ」
絵理ちゃんがおもむろに頭を叩く。さすがにやりすぎではと思うのは始めてではない。
「いってーな!」
「なにか文句でも?」
「あるに決まってんだろ!」
「何よ! 言ってみなさいよ!!」
「ちょっと待ってちょっと待ってー。こんなところでケンカしないでー」
私が口を挟むとふたりはそっぽを向いく。なんでこんなに仲が悪いのか。いや、1度別れてるからかもしれないけど、それを考えると仲が良すぎると思う。なんだろう。上っ面しか見えないのって気持ちが悪い。
「ただいま……って、何かあった?」
そこに飲み物を買ってきてくれた森谷くんが戻ってきた。
「ううん、何でもないの!」
絵理ちゃんがぶりっこの様な反応を見せ始める。本気を魅せ始めているのだろうか。
それを見てか後方の男は鼻で笑う。
「ならいいんだけど。ねぇ、伊藤さん」
「それでいいならそれでいいと思うよ。ありがとう」
キンキンのコーヒー缶を受け取ると直ぐにプルタップを持ち上げる。パカンと爽快な音を上げると直ぐに渇ききった大地に流す。
「生き返るわー」
「なんか、年上な言い方だよね」
そう言われて急に恥ずかしくなる。これは普通ではないのか。女の子はそんなことしない……、か。
「赤くなるところも可愛いね」
更にかっと熱くなる。それを悟られる前に後ろを向く。




