2ー29
地元でも有名なそのお化け屋敷は雰囲気すら恐ろしく感じる。様な気がする。
全然幽霊やらゾンビやらを信じていない私からすると、こういったアトラクション自体が馬鹿らしく思う。どうせ生きている人間がゾンビの格好をして驚かせに来るに違いない。不意な大音量を聞かされればそれは誰だって驚くに決まっている。
「並んでるねー」
お化け屋敷、と言うよりはお化け病院と言う感じだろうか。いかにも出そう、という訳でもなくよくある建物である。その入口にはkeep outと書かれている黄色いテープが装飾されていてる。係員が順序良く建物への案内をして行く中、その後方には果てしない人の列。
「さすがに人気だからねー」
「どうする?」
特に興味もないので入らなくてもいい雰囲気を醸す。
「他の乗って待つ?」
「言うて待つんだから今並んじまおうよ」
何故こんなにも香川くんは押せ押せなのか。行きたいと言えば曲げないその精神。私にも欲しい。
「なら頑張って待とうか」
全員で長い列の最後尾まで行き並ぶ。
列は出来るだけ日陰を通っているがやむを得ず日向を通る場所もある。スタッフの人に聞けば1時間は並ぶとのことなので飲み物を買うことをオススメされる。
「買ってくるね」
森谷くんが率先して列から抜ける。各々が飲みたい物を告げ、足早に近くの自販機に向かっていった。
「カッコイイわー」
小耳に挟む様なレベルだった。彼女は森谷くんしか見えていないようだった。