2ー27
「早希ちゃんだけずるいー」
まだふらふらする頭。恥ずかしい気持ちもあるがぼーっとしている。
「森谷くんに頼めば?」
横目にそんなことを言うと彼女は直ぐに顔を赤くした。
「伊藤さん、さすがにそれはね……」
「できるでしょー、ちょちょいのって」
良く見ると森谷くんの顔も赤い。さっきのが恥ずかしかったのか、それとも大見え切って行うのが恥ずかしいのかわからない。
私も絵理ちゃんにソフトクリームを貰いゆっくり嘗める。
蝉の鳴き声が聞こえる。もしかしたら今年初めてかもしれない。この音を聞くとなんとも暑さを感じる。日照りもそろそろ頂点に到達するだろう。
なんで蝉の鳴き声を気にしているんだ、私は。目の前に3人の友だちがいるのに。そう感じたのは会話も無くただソフトクリームを食べている集団を怪しく見る人が通っていった時だ。
「そう言えば、今日は綺麗な服着てるよね?」
森谷くんが絵理ちゃんに話しかける。記憶にある彼女ではないと皆同様な事を考えていたのだろうか。
「あ、うん。ありがと……」
フェイドアウトしていく声と共に蝉の鳴き声も止まる。
「その方が似合ってると思うよ」
にこっとするその顔に、何故か私がドキッとする。そよ風が吹き抜けると蝉がまた鳴き出す。
「あ、アイス……」
森谷くんは溶け落ちそうになっている絵理ちゃんのソフトクリームを嘗めて塞き止める。
「セーフ」
これは所謂間接キスといやつではないかと思っていると絵理ちゃんの顔が真っ赤に染めた。
「早く食べないとね」
「う、うん……」
絵理ちゃんはその嘗められた部分を避けて食べ進める。